2026年10月、「106万円の壁」がなくなると会社は何が変わるのか

2026年10月、「106万円の壁」がなくなると会社は何が変わるのか変わるのは2027年10月からの「人数の条件」です

読了の目安 6分2026年8月時点の制度にもとづきます

企業の派遣活用社会保険派遣元派遣先

ひとことで言うと

「106万円の壁」の撤廃とは、パートやアルバイトが社会保険(健康保険・厚生年金)に入る条件のうち、「月の給料が8.8万円以上」という条件がなくなることです。2026年10月1日からです。

ただ、この変更で会社の負担はほとんど変わりません。最低賃金が上がり、週20時間働けば、ほぼ自動的に8.8万円を超えるようになっているためです。

会社側で変わり始めるのは、2027年10月から、社会保険に入れる対象の会社が人数の少ない会社へ広がっていくことです。なお、派遣スタッフが社会保険に入るかどうかは、派遣社員を受け入れる会社(派遣先)の人数ではなく、雇い主である派遣会社(派遣元)の人数と働き方で決まり、手続きも派遣元がします。

2026年10月になくなるのは「月8.8万円」の条件だけです

まず、登場する言葉を2つだけ押さえます。

短時間労働者

正社員より働く時間が短いパート・アルバイトのことです。週の働く時間が正社員の4分の3未満の人が、ここに入ります。この記事で「パート」と書くときは、この人たちのことです。

106万円の壁

法律の言葉ではありません。パートが社会保険に入る条件の「月8.8万円以上」を1年分にすると約106万円になるので、こう呼ばれています。実際に見ているのは年収ではなく、毎月の決まった給料(所定内賃金)です。

パートが社会保険に入る条件は、いま次の5つです。2026年10月1日に、このうち1つだけがなくなります。なお、人数の条件に届かない会社でも、労使で合意すれば任意でパートを加入させることができます。

パートが社会保険に入る条件(すべて満たすと加入) 2026年9月まで 会社の人数が51人以上 週20時間以上 月8.8万円以上 2か月を超えて働く見込み 学生でない 2026年10月から 会社の人数が51人以上 週20時間以上 月8.8万円以上 なくなる 2か月を超えて働く見込み 学生でない
変わるのは1行だけです。人数・時間・期間・学生の条件は、2026年10月以降もそのままです。

法律上 2025年6月に成立した年金制度改正法で、月8.8万円の条件をなくすことが決まりました。いつなくすかは政令で決めることになっていて、2026年9月11日に公布された政令で、施行日が2026年10月1日と決まりました。

「週20時間以上」の条件は残ります。ですから、2026年10月以降、社会保険に入るかどうかの分かれ目は「週20時間」になります。

2026年10月に、会社の負担はほとんど変わりません

条件が1つなくなるのに、なぜ負担が変わらないのか。答えは最低賃金です。

週20時間働くと、月いくらになるか 時給 1,016円 × 週20時間 × 52週 ÷ 12か月 = 月 約88,000円 全国どこでも最低賃金が1,016円以上 → 週20時間なら、ほぼ自動的に8.8万円を超える
国(厚生労働省)も、全国の最低賃金が1,016円以上になったことを、施行日を決める理由にしています。

会社の人数が51人以上で、週20時間以上働いているパートは、ほとんどの人がもう社会保険に入っているはずです。そのため、2026年10月に新しく入る人は、ごくわずかだと考えられます。

「106万円の壁の撤廃」は大きなニュースになりましたが、最低賃金が上がったことで、壁はすでにほとんど消えていました。法律が、その状態に追いついた形です。

例外が1つあります

最低賃金の減額の特例を受けて働いていて、月の給料が8.8万円に届かない人は、当分の間、加入の対象から外れます(申し出により加入することはできます)。

会社側で変わり始めるのは、2027年10月からです

会社にとって大きいのは、もう1つの条件、「会社の人数が51人以上」のほうです。この人数が、2035年10月まで段階的に下がり、最後はなくなります。

パートを社会保険に入れる会社の人数(この順で広がります) いま 51人以上 2027年10月 36人以上 2029年10月 21人以上 2032年10月 11人以上 2035年10月 条件なし ※ 人数は厚生年金に入っている人の数で、会社(法人)全体で数えます。パート(短時間労働者)は数えません
2026年10月は、この年表に入っていません。人数の条件が最初に動くのは2027年10月です。

たとえば、厚生年金に入っている人が40人の会社(A社)で、事務のパートが週24時間で働いているとします。

  • 2026年10月:A社は51人未満なので、このパートは社会保険に入りません。変わりません。
  • 2027年10月:対象が36人以上の会社に広がるので、40人のA社のこのパートは社会保険に入ります。会社は保険料の半分を負担し、加入の手続きも始まります。
新しく対象になる会社向けの支援もあります

人数の条件が下がって新しく対象になる50人以下の会社などでは、給料が一定額(標準報酬月額12.6万円)以下のパートについて、会社が申し出て本人の保険料の一部を代わりに負担すると(上乗せの割合は給料の等級ごとに決まっています)、その上乗せ分を制度全体で支援する仕組み(保険料調整制度)が、3年間使えます。2026年10月の時点ですでに51人以上の会社は、対象外です。

人数の少ない会社ほど、動くのは先になります。自社が何人かを数えて、上の年表のどこに入るかを確かめるのが、最初にやることです。

なぜ、一度に広げず段階を踏むのか

社会保険は、会社と働く人が保険料を半分ずつ出す仕組みです。入れば、将来の年金が増え、病気で休んだときの手当も出ます。

一方で、人数の少ない会社ほど、保険料の負担と事務の手間が重くのしかかります。いきなり全部の会社に広げると、小さな会社ほど準備が間に合わなくなります。そこで、2016年10月に大きな会社(501人以上)から始めて、2022年10月に101人以上、2024年10月に51人以上と、段階を踏んで広げてきました。今回決まったのは、その続きです。

働く人の側から見ると、「働く会社の人数によって、同じ働き方でも社会保険に入れたり入れなかったりする」状態を、なくしていく流れです。

派遣スタッフの場合、人数は派遣先ではなく派遣元で数えます

ここからは、事務の人手を「パートの直接雇用」でまかなうか、「派遣」でまかなうかを考えている会社に関係する話です。

法律上 派遣スタッフを雇っているのは、派遣会社(派遣元)です。社会保険の加入手続きをするのも、雇い主である派遣元です。人数の条件は雇い主ごとに数えるので、派遣先が何人の会社かではなく、派遣元の人数で見ることになります。

派遣元は、派遣先に対して、派遣スタッフが社会保険に入っているかどうかを知らせることになっています。入っていない場合は、その具体的な理由も知らせます(労働者派遣法35条1項5号・同条2項、同法施行規則27条の2第1項・第2項)。

派遣元が50人以下の場合、正社員の4分の3未満で働く派遣スタッフは、いまは加入していないことがあります。その場合は、派遣元の人数に応じて、2027年10月以降に加入が始まります。入っているかどうかは、派遣元から届く通知で確かめられます。

週20時間以上の事務の人手、社会保険はどうなるか パートを直接雇用する 加入するか 自社の人数で決まる(上の年表) 手続き・毎年の届出 自社で行う 保険料の会社負担分 | 自社が払う 派遣で受け入れる 加入するか 派遣元の人数で決まる 手続き・毎年の届出 派遣元が行う 保険料の会社負担分 | 派遣元が払う
どちらが得かではなく、手続きと管理を誰が持つかの違いです。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 2026年10月から、中小企業のパートも社会保険に入る
  • 2026年10月から、週20時間未満でも入る
  • 派遣にすれば、社会保険料はかからない
実際はこうです
  • 人数の条件は2027年9月まで51人以上のままです
  • 週20時間以上の条件は残ります
  • 条件を満たす派遣スタッフは派遣元で加入していて、会社負担分の保険料は派遣料金に入っています

「派遣にすれば社会保険料はかからない」は、特に誤解が多い点です。派遣にしても、社会保険料そのものが消えるわけではありません。違うのは、加入の手続きや、週20時間をまたぐ働き方の管理を、派遣元が持つという点です。派遣料金の中に何が入っているかは、派遣料金の「時給」は、スタッフの時給ではないで分解しています。

なお、実際には発注者が直接指示を出して働いてもらっているのに、契約だけ「業務委託」にしても、社会保険の加入義務はなくなりません。個人との契約なら実態は雇用と判断されることがあり、会社を通した契約なら偽装請負にあたるおそれがあります。違いは派遣と業務委託は何が違うのかで説明しています。

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

2027年10月 自社の番がいつ来るかは、人数を数えれば分かります
最初にやるのは、厚生年金に入っている人の数を確かめることです。
派遣先の担当者へ

まず、自社で厚生年金に入っている人の数を人事に確認してください。51人以上ならいまと変わりません。50人以下なら、上の年表で自社の番がいつ来るかが分かります。

そのうえで、週20時間前後で働いている事務のパートの人数を数えておくと、2027年10月以降に保険料と手続きがどれだけ増えるかを、前もって見積もれます。

いま派遣スタッフを受け入れている場合は、派遣元から届く通知で、社会保険に入っているかを確かめられます。

派遣で働く人は、派遣元の人数と働く時間で決まります

派遣で働く方へ

フルタイムに近い働き方(正社員の4分の3以上)なら、派遣元の人数に関係なく社会保険に入ります。それより短い場合は、派遣元が51人以上で、週20時間以上・2か月を超えて働く見込みがあれば、いまも加入の対象です(学生は原則として除きます)。

働く時間と社会保険のくわしい関係は、派遣の社会保険はいつから入るのかで説明しています。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 2026年10月になくなるのは「月8.8万円」の条件だけ。会社の負担はほとんど変わらない
  • 会社側で変わり始めるのは2027年10月からの人数の条件。36人以上 → 21人以上 → 11人以上 → 条件なし
  • 派遣スタッフの社会保険は派遣元の人数と働き方で決まり、派遣先の人数には関係しない
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

人事に「いま厚生年金に入っている人は何人か」を聞き、上の年表のどこに自社が入るかを書き出す。

50人以下の会社なら、自社の番が来る年月が分かります。その年月と、週20時間前後で働くパートの人数を並べておくと、直接雇用を続けるか、派遣も含めて考えるかを、期限から逆算して決められます。

派遣を頼むとき、社会保険以外に料金の中に何が入っているかは、別の記事で分解しています。

派遣料金の「時給」は、スタッフの時給ではない

※ 2026年9月13日時点の制度にもとづいています。根拠:社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(令和7年法律第74号)、同法の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第275号・2026年9月11日公布)、厚生年金保険法12条5号、厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」、日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」、令和7年法律第74号附則22条〜25条・令和8年政令第272号(保険料調整制度)、労働者派遣法35条1項5号・同条2項、同法施行規則27条の2第1項・第2項。月額の計算(1,016円×20時間×52週÷12か月)は目安で、実際の判定は所定内賃金(残業代・賞与・通勤手当などを除く)で行います。A社の例は架空のものです。

事務職の人材派遣を承っています

私たちは、事務まわりの人手についてのご相談をお受けしています。この記事のような制度の整理も、その中のひとつです。発注が決まっていない段階のご相談でもかまいません。

事務派遣について見る