派遣会社を比べるとき、単価以外に何を見るか

派遣会社を比べるとき、単価以外に何を見るか安い見積は、どこかを削っています

読了の目安 5分2026年8月時点の制度にもとづきます

企業の派遣活用マージン率社会保険有給休暇派遣元

ひとことで言うと

派遣会社(派遣元)に支払う派遣料金は、派遣スタッフの時給がそのまま請求額になるわけではありません。社会保険料の会社負担分、有給休暇の費用、教育訓練の費用、募集費などが入っています。

だから単価が安い見積は、この中のどれかを削っています。どれを削ったかは、見積書の数字を見ても分かりません。

比べるときに効くのは、次の3つです。欠員が出たとき代わりを出せるか/就業後の窓口は誰か/教育を、いつ誰がやっているか。

3つとも、電話で聞けば答えが分かれます。

派遣料金は、時給の足し算ではありません

派遣料金の中に入っているもの 派遣スタッフの時給 社会保険料 有給の費用 教育・募集 運営・利益 ※ 帯の長さはイメージです。実際の割合は職種・地域・契約の内容で変わります 単価を下げると、どこかが縮みます 時給を下げる → 人が集まらない。集まっても続かない 教育訓練費を削る → 現場に入ってから覚えることになる 募集費・運営費を削る → 欠員が出たとき、代わりが出てこない
社会保険料の料率と有給の付与日数は法律で決まっているので、この2つを外すことはできません。

法律上 派遣元は、要件を満たす派遣スタッフを社会保険に加入させ(健康保険法・厚生年金保険法)、条件を満たせば年次有給休暇を与え(労働基準法39条)、段階的かつ体系的な教育訓練を実施しなければなりません(労働者派遣法30条の2)。これらの費用は、派遣料金の中から出ています。

実務では 社会保険料の料率と有給の付与日数は法律で決まっているため、この2つを外すことはできません。ただし金額は時給に連動します。時給を下げれば、会社が負担する社会保険料も有給1日あたりの費用も一緒に下がります。

つまり、単価を下げるときに実際に縮むのは、教育訓練費、募集費、運営費、そして時給そのものです。

ただし、時給には下限があります

労使協定方式をとっている派遣元では、国が毎年示す職種ごと・地域ごとの水準を下回る時給にはできません(労働者派遣法30条の4)。単価を下げても、時給を好きなだけ下げられるわけではありません。だから、しわ寄せは教育や募集の側に出ます。

安い見積で削られやすい3つ

削られたものは、現場でこう出ます 教育を削る 現場に入ってから覚えることになる。教える側の時間が増える 募集の体制を削る 欠員が出たときに代わりが出てこない。席が空いたままになる 就業後の担当を削る 連絡が取れない。問題が起きてから動くので、間に合わない
どれも見積書には出てきません。出てくるのは、就業が始まってからです。

削られたものは、金額ではなく時間として、派遣スタッフを受け入れる会社(派遣先)に返ってきます。教える時間、席が空いている間の手当て、連絡がつかない担当者を探す時間です。

単価が1時間あたり100円安くても、月160時間なら16,000円の差です。欠員の穴埋めに社員が数日入れば、その差は消えます。

単価の代わりに聞く3つのこと

見積を並べたときに聞くこと 代わりを出せますか 急に来られなくなったとき 何日で出せるか 日数で答えが返るか 窓口は誰ですか 就業が始まったあと 誰に連絡すればいいか 名前で答えが返るか 教育はいつですか 現場に入る前にやるのか 入ってから現場が教えるのか 中身まで言えるか
3つとも、その場で答えられるかどうかで差が出ます。順番はありません。

1つめの「急に来られなくなったとき、代わりは何日で出せますか」は、いちばん答えが分かれます。「すぐに手配します」ではなく、日数で返ってくるかを見てください。日数で答えが返る派遣元は、その職種の人をすぐ動かせる見込みを持っています。

2つめは「就業が始まったあと、誰に連絡すればいいですか」。営業の担当者と、就業後の担当者が別のことがあります。名前で答えが返るかどうかを確かめてください。

3つめは「教育は、現場に入る前ですか、入ってからですか」。入る前にやっているなら、何を教えているかまで聞けます。法律上 派遣元には教育訓練の実施が求められていますが(労働者派遣法30条の2)、実務では 中身と時期は派遣元によってかなり違います。

マージン率の数字だけでは、比べられません

こう思われがちです
  • マージン率が低いほど、良心的な派遣元だ
  • マージンは、派遣元の利益のことだ
  • 率が低ければ、派遣スタッフの取り分が多い
実際はこうです
  • マージンの中には社会保険料の会社負担分や有給の費用も入っています
  • 利益だけを指すものではありません
  • 率を下げれば、教育や募集の費用も一緒に減ります

法律上 派遣元はマージン率などの情報を公開することになっています(労働者派遣法23条5項)。数字は比べられますが、低いほど良いという読み方はできません。

マージン率の中身をどう読むかは、マージン率は低いほど良い会社?で分解しています。数字を見て判断に迷ったときは、そちらを先に読んでください。

私たちの場合

数字が違うとき、中で何が違うのかを聞いてください
ここから先は法律の話ではなく、私たちが実務でやっていることです。

私たちは、採用のときに担当者が必ず本人と会って話し、自社で決めた基準を満たした人だけをご提案しています。基準を満たさない場合は、条件が合っていてもお出ししません。

送り出す前に、ビジネスマナー、報告・連絡・相談の仕方、その職場で先に伝えておくこと(電話の取り次ぎ方、報告する相手、忙しくなる日)をすり合わせます。就業が始まったあとは、派遣先と派遣スタッフの双方に定期的にうかがい、いただいたお話は本人にも戻します。

これらは法律で決まっているものではなく、私たちが自社で決めて運用しているやり方です。見積の数字には表れませんが、費用はここに入っています。

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

見積を並べたら、いちばん安いものと、いちばん高いものの2社に、「急に来られなくなったとき、代わりは何日で出せますか」と聞いてください。日数で答えが返るかどうかで、体制の差が出ます。

社内で稟議を通すときは、単価の差と、欠員が出たときに社員が入る日数を並べて書くと、判断してもらいやすくなります。

派遣で働く人にも、関係があります

派遣で働く方へ

法律上 派遣元は、雇い入れるときと派遣するときに、その人にかかる派遣料金の額を本人へ明示しなければなりません(労働者派遣法34条の2)。求めなくても知らされるものです。マージン率も各社が公開しています。

ただし、率が低い派遣元がそのまま良いとは限りません。教育や、困ったときの窓口も同じ費用から出ています。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 派遣料金は時給だけではない。社会保険料・有給・教育・募集が入っている
  • 単価を下げると縮むのは教育・募集の体制・就業後の担当。見積書には出ない
  • 比べるのは単価ではなく代わりを何日で出せるか/窓口は誰か/教育はいつ誰がやるか
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

いま持っている見積の派遣元に「急に来られなくなったとき、代わりは何日で出せますか」と電話で聞く。

「3営業日をめどに」のように日数で返ってくれば、その職種の人をすぐ動かせる見込みを持っている可能性が高いと考えられます。「状況によります」で止まる場合は、欠員が出たときに時間がかかると考えて、社内の手当てを先に決めておいてください。

料金の内訳をもっと詳しく知りたい場合は、別の記事で分解しています。

派遣料金の「時給」は、スタッフの時給ではない

※ 2026年9月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法23条5項(マージン率等の情報提供)、30条の2(段階的かつ体系的な教育訓練)、30条の4(労使協定方式による賃金の下限)、34条の2(労働者派遣に関する料金の額の明示)、労働基準法39条(年次有給休暇)、健康保険法・厚生年金保険法。料金の内訳図の割合はイメージで、実際の数値ではありません。「私たちの場合」に書いた運用は法令の定めではなく、私たちが自社で決めているものです。

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