派遣と業務委託は何が違うのか

派遣と業務委託は何が違うのか分かれ目は「誰が指示を出すか」の一点だけです

読了の目安 7分2026年8月時点の制度にもとづきます

派遣の基本派遣法派遣元派遣先偽装請負

ひとことで言うと

派遣は、派遣会社に雇われて、別の会社で働く働き方です。雇う会社と、指示を出す会社が分かれています。

業務委託(請負)は、請負会社が雇い、請負会社が指示を出します。頼む側は結果を受け取ります。

分かれ目は「誰が指示を出すか」の一点だけです。値段でも、期間でも、契約書の題名でもありません。

この線を越えると、その人に「うちの社員になりませんか」と申し込んだことにされる決まりがあります。

先に、登場人物を決めておきます

この記事に出てくる言葉
派遣先
人に来てもらい、仕事の指示を出す会社。この記事を読んでいる方の会社です。
派遣元(派遣会社)
その人を雇い、給料を払い、社会保険や有給休暇の手続きをする会社。
派遣スタッフ
派遣元に雇われて、派遣先で働く人。
発注者・請負会社
業務委託で仕事を頼む側と、引き受ける側。
指揮命令
仕事の順番ややり方を指示すること。「これを先にお願いします」の一言も、指揮命令です。

まず、派遣とはどういう働き方か

派遣を一言でいうと、雇う会社と、指示を出す会社が分かれている働き方です。給料を払うのは派遣元。毎日の指示を出すのは派遣先です。

誰が雇って、誰が指示を出すか 派遣元 雇っている会社 派遣先 指示を出す会社 派遣スタッフ 労働者派遣契約 雇う・給料を払う 仕事の指示を出す 雇う人と指示を出す人が別。これが派遣です
矢印が2本とも同じ会社から出ていれば、それは派遣ではありません。

ふつうの働き方なら、この2本の矢印は同じ会社から出ます。派遣だけ、別々の会社から出ます。

契約は2本です。派遣元と派遣スタッフの雇用契約と、派遣元と派遣先の労働者派遣契約。この2本だけです。毎日いちばん近くで指示を出している派遣先とは、契約を結んでいません。指示は出るのに、契約は無い。ここが派遣の分かりにくいところです。

派遣の決まりが多いのは、この一点が理由です。3年の期限も、国の許可が要ることも、すべてここから出てきます。

業務委託とは、どこが違うのか

指示は、どこから出ますか 労働者派遣 指示は、派遣先から出せます 派遣先 派遣元 派遣スタッフ 派遣を頼む 雇っている 業務委託(請負) 発注者からは、指示を出せません 発注者 請負会社 請負会社の人 仕事を頼む 指示を出す
左右とも、会社が2つと働く人が1人です。違うのは、指示がどこから出るかだけです。赤い点線は、業務委託では出せない矢印です。

会社の数も、人の数も同じです。契約の題名も見なくてかまいません。朝、その人に「この順でお願いします」と言っているのがどちらの会社か。それだけで決まります。

例です。2026年4月、A社の営業1課で、請求書の入力が月80時間ぶん増えました。

労働者派遣で頼むと
雇うのは
派遣元
指示を出すのは
A社の営業1課
言えること
「この順で入力してください」「今日はこちらを先に」
A社に乗る手続き
契約書に責任の程度・組織単位・指揮命令者まで記載/抵触日の事前通知/派遣先責任者の選任/派遣先管理台帳を3年保存
業務委託で頼むと
雇うのは
請負会社
指示を出すのは
請負会社
言えること
「入力済みのデータを月末までに」。やり方は相手に任せます
A社に乗る手続き
上の手続きは要りません

実務では業務委託が選ばれる理由は「安いから」より「手続きが要らなくて楽だから」のほうが多いです。ところが実際には、現場が請負会社の人に直接指示を出していることがあります。その状態は、業務委託ではありません。

業務委託で来ている人に指示を出すと、偽装請負になります

契約書は業務委託なのに、していることは労働者派遣。これを偽装請負といいます。

このとき、発注者がその人に「自社の社員にならないか」と申し込んだことにされる決まりがあります。労働契約申込みみなし制度といいます。

申し込んだ内容は、その時点でその人が働いていた条件と同じです。本人が承諾すれば、その瞬間に雇用契約が成立します。しかもこの申し込みは、違反が終わった日から1年間、発注者の側から取り消せません。

1回では、ここまで進みません

指示を出したのが1回でも、していることが労働者派遣なら偽装請負です。行政の指導の対象になります。いっぽう、申し込んだことにされる決まりが働くには、法律の適用を免れる目的が要ります。うっかり1回声をかけただけでは、ここまで進みません。

相手が派遣の許可を持っているかは、その場で調べられます

人を派遣する商売には、国の許可が要ります。そして派遣先の側にも禁止があります。許可のない会社から派遣を受け入れることです。

許可のない会社が人を出すときは、業務委託や請負の形をとります。この場合も、その人に「自社の社員にならないか」と申し込んだことにされます。

許可について、誰が何をするか 1 示してもらう 派遣元には、契約の前に 「許可を持っています」と 示す義務があります 許可のない会社は、示せません 2 契約書に書く 示された許可の内容を 契約書に書いておくのは 派遣先の義務です 3 派遣先が調べる 厚生労働省の 「人材サービス総合サイト」 に、会社の名前を入れます 許可番号は「派○○-○○○○○○」の形をしています
1と2は、法律で決まっている義務です。許可の有無をその場で確かめられるのは、3だけです。

法律上派遣元には、契約の前に許可を示す義務があります。示された内容を契約書に書くのは、派遣先の義務です。

実務ではここが抜けたまま取引が始まっていることがあります。派遣の許可は資産の要件や責任者の講習があって簡単には取れないため、持っていない会社が人を出すには請負の形にするしかありません。

なぜ、この線引きがあるのか

もともと、人を集めて別の会社に送り、その会社の指示で働かせる商売は禁じられていました。理由は2つです。働く人の意思を無視して働かせること。そして、本来その人に渡るはずの賃金を、間に入った側が取ってしまうことです。

禁止から、条件つきの解禁へ
  1. 1947年(昭和22年)人を送って他社の指示で働かせる商売を、原則禁止にした

    職業安定法44条。働く人の意思を無視した労働と、間に入って賃金を取ることを防ぐためでした。

  2. 同じころ請負の形にした抜け道を、ふさぐ決まりを置いた

    職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)4条2項。「たとえその契約の形式が請負契約であつても」という書き出しで、形ではなく実態で判断すると定めています。

  3. 1985年(昭和60年)労働者派遣法ができ、禁止に例外が認められた

    認められたのは自分が雇っている人を送り出す場合だけ。だから派遣元は必ず雇用主になります。

  4. 1986年(昭和61年)請負と労働者派遣を分ける基準が引き直された

    37号告示。派遣を解禁したその年に、請負との線を引き直す必要が生まれました。

  5. 1999年(平成11年)頼める仕事が、原則として自由になった

    このとき国は派遣を「臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策」と位置づけています。

  6. 2015年(平成27年)期限が「3年」で整理され、許可制に一本化された

    いまの形です。

見る項目は増えましたが、考え方は1947年から変わっていません。請負会社が自分の判断で動いているかどうかを見ます。そして派遣の決まりが多いのは、もとが禁止で、条件つきで認められた仕組みだからです。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 契約書に「業務委託契約書」と書いてあれば業務委託だ
  • 業務委託のほうが安いから選ばれている
  • ちょっと声をかけるくらいなら指示にならない
  • 自社に常駐しているかどうかで決まる
  • 派遣スタッフは派遣先に雇われている
  • 派遣先が気に入らなければ辞めさせられる
実際はこうです
  • 題名では決まりません。実際に誰が指示を出しているかで決まります
  • 手続きが要らなくて楽だから選ばれていることのほうが多いです
  • 仕事の順番ややり方を伝えれば、それが指揮命令です
  • 場所ではなく、指示の出どころで決まります
  • 雇っているのは派遣元。給料も派遣元から出ます
  • 雇用主ではないので、派遣先が解雇することはできません

派遣を受け入れる会社は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

決めるのは、契約書の題名ではありません。朝の仕事の指示を、誰が出しているかです。

自社の側が出しているなら、それは労働者派遣です。業務委託の契約でその状態になっているなら、派遣で頼み直す形に切り替えてください。切り替えは、相手の会社と一緒に進められます。

そして派遣で受け入れている場合も、指示は出せますが雇用主ではありません。「明日から来なくていい」は言えませんし、契約書に書いていない仕事も頼めません。頼みたい仕事が増えたときは、その場で指示を足さず、労働者派遣契約を結び直してください。

派遣で働く人にも、関係があります

派遣で働く方へ

自分がどの契約で働いているかは、給料を払っている会社の名前で分かります。給与明細に載っている会社と、毎日指示を出してくる会社が違っていて、その2社の間に労働者派遣の契約がない場合、形が崩れている可能性があります。

困ったときにどちらに言うかは、内容で決まります。雇用のこと(給料・有給・社会保険・契約の期間)は派遣元。仕事のこと(作業の手順・設備・職場の環境)は派遣先です。迷ったら派遣元に言ってかまいません。

判断がつかないときは、都道府県労働局の需給調整事業部(課)に相談できます。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 派遣とは雇う会社と指示を出す会社が分かれている働き方。契約は2本で、派遣先とは結んでいない
  • 業務委託との分かれ目は「誰が指示を出すか」の一点だけ。契約書の題名では決まらない
  • 業務委託で来ている人に発注者が直接指示を出すと偽装請負になる
  • 許可のない会社から受け入れることも禁止。許可の有無は、社名を入れれば調べられる
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

いま業務委託で来てもらっている会社の正式な社名を、厚生労働省「人材サービス総合サイト」で検索する。

許可が出てくれば、その会社は派遣で頼み直すことができます。出てこなければ、いまの形のまま指示を出していないかを先に確かめてください。調べるのに5分もかかりません。社名は請求書に書いてあります。

人に来てもらう頼み方は、もうひとつあります。自社で雇う形です。紹介会社が何をする会社なのかを説明しています。

派遣と職業紹介の違い

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法2条1号・5条(許可)・24条の2・26条・26条3項・40条の2・40条の6、同法施行規則21条4項、職業安定法44条、職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)4条2項、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」「労働者派遣制度の概要及び改正経緯について」、e-Gov法令検索、国会会議録検索システムで確認しています。許可の有無は厚生労働省「人材サービス総合サイト」で調べられます。

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