派遣と業務委託の違い
派遣と業務委託の違い分かれ目は「誰が指示を出すか」の一点だけです
労働者派遣は、派遣会社が雇い、来てもらう会社が指示を出す。
業務委託(請負)は、請負会社が雇い、請負会社が指示を出す。頼む側は結果を受け取ります。
分かれ目は「誰が指示を出すか」の一点だけです。値段でも、期間でも、契約書の題名でもありません。
この線を越えると、その人に「うちの社員になりませんか」と申し込んだことにされる決まりがあります。
先に、登場人物を決めておきます
- 派遣先
- 人に来てもらう会社。この記事を読んでいる方の会社です。
- 派遣元(派遣会社)
- その人を雇って、給料を払っている会社。
- 派遣スタッフ
- 派遣元に雇われて、派遣先で働く人。
- 発注者・請負会社
- 業務委託で仕事を頼む側と、引き受ける側。
- 指揮命令
- 仕事の順番ややり方を指示すること。「これを先にお願いします」の一言も、指揮命令です。
見るのは1つだけ。誰が指示を出すか
会社の数も、人の数も同じです。契約の題名も見なくてかまいません。朝、その人に「この順でお願いします」と言っているのがどちらの会社か。それだけで決まります。
例です。2026年4月、A社の営業1課で、請求書の入力が月80時間ぶん増えました。
- 雇うのは
- 派遣元
- 指示を出すのは
- A社の営業1課
- 言えること
- 「この順で入力してください」「今日はこちらを先に」
- A社に乗る手続き
- 契約書に責任の程度・組織単位・指揮命令者まで記載/抵触日の事前通知/派遣先責任者の選任/派遣先管理台帳を3年保存
- 雇うのは
- 請負会社
- 指示を出すのは
- 請負会社
- 言えること
- 「入力済みのデータを月末までに」。やり方は相手に任せます
- A社に乗る手続き
- 上の手続きは要りません
実務では業務委託が選ばれる理由は「安いから」より「手続きが要らなくて楽だから」のほうが多いです。ところが実際には、現場が請負会社の人に直接指示を出していることがあります。その状態は、業務委託ではありません。
業務委託で来ている人に指示を出すと、偽装請負になります
契約書は業務委託なのに、していることは労働者派遣。これを偽装請負といいます。
このとき、発注者がその人に「自社の社員にならないか」と申し込んだことにされる決まりがあります。労働契約申込みみなし制度といいます。
申し込んだ内容は、その時点でその人が働いていた条件と同じです。本人が承諾すれば、その瞬間に雇用契約が成立します。しかもこの申し込みは、1年間、発注者の側から取り消せません。
指示を出したのが1回でも、していることが労働者派遣なら偽装請負です。行政の指導の対象になります。いっぽう、申し込んだことにされる決まりが働くには、法律の適用を免れる目的が要ります。うっかり1回声をかけただけでは、ここまで進みません。
相手が派遣の許可を持っているかは、その場で調べられます
人を派遣する商売には、国の許可が要ります。そして派遣先の側にも禁止があります。許可のない会社から派遣を受け入れることです。
許可のない会社が人を出すときは、業務委託や請負の形をとります。この場合も、その人に「自社の社員にならないか」と申し込んだことにされます。
法律上派遣元には、契約の前に許可を示す義務があります。示された内容を契約書に書くのは、派遣先の義務です。
実務ではここが抜けたまま取引が始まっていることがあります。派遣の許可は資産の要件や責任者の講習があって簡単には取れないため、持っていない会社が人を出すには請負の形にするしかありません。
なぜ、この線引きがあるのか
もともと、人を集めて別の会社に送り、その会社の指示で働かせる商売は禁じられていました。理由は2つです。働く人の意思を無視して働かせること。そして、本来その人に渡るはずの賃金を、間に入った側が取ってしまうことです。
- 1947年(昭和22年)人を送って他社の指示で働かせる商売を、原則禁止にした
職業安定法44条。強制労働と、間に入って賃金を取ることを防ぐためでした。
- 同じころ請負の形にした抜け道を、ふさぐ決まりを置いた
職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)4条2項。「たとえその契約の形式が請負契約であつても」という書き出しで、形ではなく実態で判断すると定めています。
- 1985年(昭和60年)労働者派遣法ができ、禁止に例外が認められた
自分が雇っている人を送り出す場合だけ、認められました。
- 1986年(昭和61年)請負と労働者派遣を分ける基準が引き直された
37号告示。派遣を解禁したその年に、請負との線を引き直す必要が生まれました。
見る項目は増えましたが、考え方は1947年から変わっていません。請負会社が自分の判断で動いているかどうかを見ます。
よくある勘違い
- 契約書に「業務委託契約書」と書いてあれば業務委託だ
- 業務委託のほうが安いから選ばれている
- ちょっと声をかけるくらいなら指示にならない
- 自社に常駐しているかどうかで決まる
- 題名では決まりません。実際に誰が指示を出しているかで決まります
- 手続きが要らなくて楽だから選ばれていることのほうが多いです
- 仕事の順番ややり方を伝えれば、それが指揮命令です
- 場所ではなく、指示の出どころで決まります
派遣を頼む会社は、ここだけ覚えてください
決めるのは、契約書の題名ではありません。朝の仕事の指示を、誰が出しているかです。
自社の側が出しているなら、それは労働者派遣です。業務委託の契約でその状態になっているなら、派遣で頼み直す形に切り替えてください。切り替えは、相手の会社と一緒に進められます。
派遣で働く人にも、関係があります
自分がどの契約で働いているかは、給料を払っている会社の名前で分かります。給与明細に載っている会社と、毎日指示を出してくる会社が違っていて、その2社の間に労働者派遣の契約がない場合、形が崩れている可能性があります。
そのときの相談先は、まず自分を雇っている会社です。次に、都道府県労働局の需給調整事業部(課)です。
まとめ
- 分かれ目は「誰が指示を出すか」の一点だけ。契約書の題名では決まらない
- 業務委託で来ている人に発注者が直接指示を出すと偽装請負になる
- 許可のない会社から受け入れることも禁止。許可の有無は、社名を入れれば調べられる
いま業務委託で来てもらっている会社の正式な社名を、厚生労働省「人材サービス総合サイト」で検索する。
許可が出てくれば、その会社は派遣で頼み直すことができます。出てこなければ、いまの形のまま指示を出していないかを先に確かめてください。調べるのに5分もかかりません。社名は請求書に書いてあります。
人に来てもらう頼み方は、もうひとつあります。自社で雇う形です。紹介会社が何をする会社なのかを説明しています。
派遣と職業紹介の違い※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法2条1号・24条の2・26条3項・40条の6、同法施行規則21条4項、職業安定法44条、職業安定法施行規則(昭和22年労働省令第12号)4条2項、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、e-Gov法令検索、国会会議録検索システムで確認しています。許可の有無は厚生労働省「人材サービス総合サイト」で調べられます。
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