抵触日が来たときの選択肢は4つ
抵触日が来たときの選択肢は4つ決めるのは2つの問いだけ。ただし4つは「決める人」が違います
選べる道は4つです。直接雇用に切り替える/派遣元で無期雇用にしてもらう/別の課へ移ってもらう/後任を立てる。
決めるのに答える問いは2つだけ。「その業務は続くか」「その方に続けてほしいか」です。
ただし4つは決める人が違います。直接雇用は派遣先と本人、派遣元での無期雇用は派遣元、別の組織単位への異動は派遣先、後任は両方。誰に言うかを間違えると、選べたはずの道が消えます。動き始めるのは半年前です。
まず答えるのは、2つの問いだけ
4つを前に迷うのは、比べる軸が決まっていないからです。軸は2つで足ります。「その業務は3年後も続くか」と「その方に続けてほしいか」。
4つの中身
直接雇用に切り替える
派遣先が、その方を自社の社員やパート・契約社員として直接雇う道です。
法律上派遣元は「引き抜き禁止」の契約を結べません(33条)。実務では職業紹介として扱われ、手数料が発生する取り決めになっていることがあります。まず契約書を見てください。
時間がかかるのは、本人の意向確認・条件のすり合わせ・社内の稟議です。ここが片付かないと動きません。
派遣元で無期雇用にしてもらう
派遣元がその方と期間の定めのない雇用契約を結ぶと、期間制限の対象から外れます(40条の2第1項1号)。同じ課で3年を超えて働いてもらえます。
間違えやすいのは、対象外になる条件が「派遣元との無期雇用」であって、派遣先の雇用形態とは関係がないこと。派遣先が正社員を増やしても、この話には影響しません。
決めるのは派遣元です。派遣先からは相談する形になります。
同じ組織単位で3年働く見込みがあり、本人が働き続けたいと希望している場合、派遣元には「雇用安定措置」の義務があります(30条)。派遣先に直接雇用を申し込むよう求める/新しい派遣先を提供する/派遣ではない働き方で期間の定めなく雇う/有給の教育訓練や紹介予定派遣など、の4つです。直接雇用を申し込むよう求めて終わりにはできません。直接雇用に至らなければ、残りの3つのいずれかを追加で講じる義務があります(施行規則25条の2第2項)。
別の組織単位へ移ってもらう
個人単位の期限は「同じ組織単位で3年」なので、別の組織単位へ移れば数え直しになります(事業所単位の枠内であることが前提です)。
ただし条件は実態が変わること。部署名を変えただけ、席を移しただけでは認められません。
後任を立てる
いちばん多いつまずきは、引き継ぎの時間を見ていないことです。
賃貸住宅の更新に似ています。時期は最初から分かっていて、住み続けるのか、条件を変えるのか、引っ越すのかを決める。直前に決めると、引っ越し業者が押さえられません。期限そのものより、間に合わないことのほうが問題になります。
4つは、決める人が違います
見ていただきたいのは、期間の数字よりも「決めるのは誰か」の列です。決める人が違うということは、動き出しの合図を出す人も違うということ。
派遣元での無期雇用を選びたいのに派遣先の中だけで検討していると、期限が近づいてから派遣元に相談することになり、そこから要件確認が始まります。方向が決まった時点で、決める人に伝わっているかを確かめてください。
やってはいけない進め方
その時点で、派遣先がその方に労働契約を申し込んだものとみなされます(40条の6)。条件は、そのとき派遣元との間にあったものと同じ。本人が承諾すれば契約が成立し、この申込みは違反が終わった日から1年は撤回できません。「決められないまま過ぎた」がいちばん重い結果になります。
なぜ、罰金ではなく「雇う」という結果なのか
この制度が作られたきっかけは、2008年秋以降の雇止めでした。厚生労働省が2008年12月19日時点でまとめた集計では、雇止め等の対象になった非正規労働者は1,415件・約8万5千人。うち派遣が67.4%を占めていました。
ただし、これを「法改正が原因だった」と単純に結びつけることはできません。当時の政府は答弁書で、主な原因は金融危機であり「これまでの法の改正が根幹の原因ではない」と述べています。議論の契機のひとつ、という距離感が正確です。
- 2008年秋〜非正規労働者の雇止めが相次いだ
対象の多くが派遣でした。行政指導だけでは働く人が救われない、という議論が起きます。
- 2012年(平成24年)法律の題名に「派遣労働者の保護」が入り、みなし制度が作られた
4月6日公布、10月1日施行。それまでの題名は「就業条件の整備等」でした。
- 2015年(平成27年)みなし制度が、3年遅れて施行された
10月1日施行。国会での修正で、わざと3年遅らせています。
3年遅らせた理由は、修正案を提出した議員が国会で説明しています。専門26業務にあたるかの判断が現場で不安定だったこと、請負と派遣の区分について行政と現場の認識に食い違いがあったこと、そして採用の自由や労働契約の合意原則との関係を議論する時間が必要だったこと。
周知に3年かける必要がある、と国会が判断した制度です。それだけ効果が重い、ということでもあります。
よくある勘違い
- 3年たったら、その人とは終わりになる
- 派遣先が正社員を増やせば、期間制限の対象外になる
- 部署名を変えれば、3年は数え直しになる
- 3か月と1日空ければ、問題なくリセットできる
- 期限が来てから派遣元に相談すればいい
- 選べる道は4つ。終わりではありません
- 対象外の条件は派遣元との無期雇用。派遣先の雇用形態は関係ありません
- 業務の実態が変わっていなければ認められません
- それだけを目的に一度切るのは、制度の趣旨から外れます
- 1〜2か月前からでは選べる道が減ります。逆算すると半年前です
この決定を、いつ本人に伝えるか
4つのどれを選んでも、いちばん影響を受けるのはその職場で3年働いてきた本人です。生活が続くかどうかの話です。
次を探すなら時間が要ります。続けられるなら早く知りたい。決まっていない段階でも「いま検討しています」と伝えられるかどうかで、その後がずいぶん変わります。
派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください
先に答えるのは「その業務は来年も続くか」の1問です。これだけで候補が半分になります。
そして、方向が決まったら決める人に伝わっているかを確かめてください。派遣元での無期雇用を選びたいのに社内だけで検討していると、その道は時間切れで消えます。
派遣で働く人にも、関係があります
同じ組織単位で3年働く見込みがあり、働き続けたいと希望を伝えている場合、派遣元には雇用安定措置の義務があります(30条)。黙っていると、この義務のスイッチが入りません。
伝える相手は派遣元の担当者です。派遣先ではありません。「このあとも働きたい」と言葉にして残しておいてください。
まとめ
- 選べる道は4つ。直接雇用/派遣元で無期雇用/別の組織単位へ/後任。3年で終わりではない
- 決めるのは「業務は続くか」「その方に続けてほしいか」の2問だけ。ただし4つは決める人が違う
- 動き始めるのは半年前。1〜2か月前からでは選べる道が減る
いちばん期限が近い方を1人選んで、「その業務は来年も続くか」に Yes か No で答えを書く。
4つを並べて悩む前に、この1問だけで候補が半分になります。Yes なら直接雇用・派遣元での無期雇用・別の組織単位へのどれか、No なら後任か期間満了です。答えが出ないなら、それは業務そのものを見直す時期が来ているということでもあります。
そもそも自社の期限がいつなのか分からないときは、先にこちらを読んでください。日付を決めるのは派遣先で、その控えは手元にあります。
抵触日とは何か、いつ来るのか※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法30条(雇用安定措置)・33条・40条の2第1項1号・40条の3・40条の6、施行規則25条の2、平成24年法律第27号 附則1条2号。歴史の記述は厚生労働省「非正規労働者の雇止め等の状況」(2008年12月19日時点の集計)、衆議院 質問主意書に対する答弁書(内閣衆質171第1号)、参議院厚生労働委員会会議録(2012年3月27日)、厚生労働省「労働者派遣制度の概要及び改正経緯について」によります。図の期間は制度上の定めではなく、準備にかかる時間の目安です。
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