抵触日が来たときの選択肢は4つ

抵触日が来たときの選択肢は4つ決めるのは2つの問いだけ。ただし4つは「決める人」が違います

読了の目安 7分2026年8月時点の制度にもとづきます

企業の派遣活用抵触日3年ルール直接雇用無期雇用雇用安定措置労働契約申込みみなし

ひとことで言うと

選べる道は4つです。直接雇用に切り替える/派遣元で無期雇用にしてもらう/別の課へ移ってもらう/後任を立てる。

決めるのに答える問いは2つだけ。「その業務は続くか」「その方に続けてほしいか」です。

ただし4つは決める人が違います。直接雇用は派遣先と本人、派遣元での無期雇用は派遣元、別の組織単位への異動は派遣先、後任は両方。誰に言うかを間違えると、選べたはずの道が消えます。動き始めるのは半年前です。

まず答えるのは、2つの問いだけ

2つの問いで、選ぶ道が決まる 縦:その業務は3年後も続くか  横:その方に続けてほしいか 業務は 続く 業務は 終わる 続けてほしい そうとは限らない 直接雇用に切り替える 派遣元で無期雇用にする その方に、その仕事を続けてもらう道 後任を立てる 業務は残るので、引き継ぐ人が要る。 引き継ぎ期間から逆算する 別の組織単位へ移ってもらう その仕事は終わるが、その方には 別の場所で続けてもらいたいとき 期間満了で終える この場合も、いつ終わるのかを 本人に早く伝えることが要る
4つを並べて悩むより、2つの問いに先に答えるほうが早く決まります。

4つを前に迷うのは、比べる軸が決まっていないからです。軸は2つで足ります。「その業務は3年後も続くか」「その方に続けてほしいか」

4つの中身

直接雇用に切り替える

派遣先が、その方を自社の社員やパート・契約社員として直接雇う道です。

法律上派遣元は「引き抜き禁止」の契約を結べません(33条)。実務では職業紹介として扱われ、手数料が発生する取り決めになっていることがあります。まず契約書を見てください。

時間がかかるのは、本人の意向確認・条件のすり合わせ・社内の稟議です。ここが片付かないと動きません。

派遣元で無期雇用にしてもらう

派遣元がその方と期間の定めのない雇用契約を結ぶと、期間制限の対象から外れます(40条の2第1項1号)。同じ課で3年を超えて働いてもらえます。

間違えやすいのは、対象外になる条件が「派遣元との無期雇用」であって、派遣先の雇用形態とは関係がないこと。派遣先が正社員を増やしても、この話には影響しません。

決めるのは派遣元です。派遣先からは相談する形になります。

派遣元の側にも義務があります

同じ組織単位で3年働く見込みがあり、本人が働き続けたいと希望している場合、派遣元には「雇用安定措置」の義務があります(30条)。派遣先に直接雇用を申し込むよう求める/新しい派遣先を提供する/派遣ではない働き方で期間の定めなく雇う/有給の教育訓練や紹介予定派遣など、の4つです。直接雇用を申し込むよう求めて終わりにはできません。直接雇用に至らなければ、残りの3つのいずれかを追加で講じる義務があります(施行規則25条の2第2項)。

別の組織単位へ移ってもらう

個人単位の期限は「同じ組織単位で3年」なので、別の組織単位へ移れば数え直しになります(事業所単位の枠内であることが前提です)。

ただし条件は実態が変わること。部署名を変えただけ、席を移しただけでは認められません。

後任を立てる

いちばん多いつまずきは、引き継ぎの時間を見ていないことです。

賃貸住宅の更新に似ています。時期は最初から分かっていて、住み続けるのか、条件を変えるのか、引っ越すのかを決める。直前に決めると、引っ越し業者が押さえられません。期限そのものより、間に合わないことのほうが問題になります。

4つは、決める人が違います

選択肢 決めるのは誰か いちばん時間がかかること 目安 直接雇用 派遣先+本人 条件のすり合わせと社内稟議 3〜6か月 契約書に紹介手数料の定めがないかを先に確認 派遣元で無期雇用 派遣元 派遣元側の要件確認と判断 2〜4か月 対象外になる条件は「派遣元との無期雇用」 別の組織単位へ 派遣先 移った先の業務を決めること 2〜3か月 部署名を変えるだけでは認められない 後任を立てる 派遣先+派遣元 人選と、引き継ぎ期間の確保 2〜3か月 引き継ぎ1か月を別に見ておく
目安の期間は、社内の決裁の速さによって変わります。短いほうに賭けないでください。

見ていただきたいのは、期間の数字よりも「決めるのは誰か」の列です。決める人が違うということは、動き出しの合図を出す人も違うということ。

派遣元での無期雇用を選びたいのに派遣先の中だけで検討していると、期限が近づいてから派遣元に相談することになり、そこから要件確認が始まります。方向が決まった時点で、決める人に伝わっているかを確かめてください。

やってはいけない進め方

× × × 期限逃れの空白 本人に伝えないまま 名前だけの異動 3か月と1日を空ければ 期間は数え直しになるが、 それだけを目的に一度 切るのは、雇用を安定 させるという制度の 趣旨から外れる 社内で結論が出るまで 黙っている。本人は 次の予定を立てられず、 直前に知らされるほど 不信が残る 部署名や席を変えて 数え直したことにする。 業務の実態が変わって いなければ、組織単位の 変更とは認められない
どれも「期限をやり過ごす」ための手であって、決めたことにはなりません。
4つのどれも選ばずに期限を過ぎると

その時点で、派遣先がその方に労働契約を申し込んだものとみなされます(40条の6)。条件は、そのとき派遣元との間にあったものと同じ。本人が承諾すれば契約が成立し、この申込みは違反が終わった日から1年は撤回できません。「決められないまま過ぎた」がいちばん重い結果になります。

なぜ、罰金ではなく「雇う」という結果なのか

この制度が作られたきっかけは、2008年秋以降の雇止めでした。厚生労働省が2008年12月19日時点でまとめた集計では、雇止め等の対象になった非正規労働者は1,415件・約8万5千人。うち派遣が67.4%を占めていました。

ただし、これを「法改正が原因だった」と単純に結びつけることはできません。当時の政府は答弁書で、主な原因は金融危機であり「これまでの法の改正が根幹の原因ではない」と述べています。議論の契機のひとつ、という距離感が正確です。

この重い結果ができるまで
  1. 2008年秋〜非正規労働者の雇止めが相次いだ

    対象の多くが派遣でした。行政指導だけでは働く人が救われない、という議論が起きます。

  2. 2012年(平成24年)法律の題名に「派遣労働者の保護」が入り、みなし制度が作られた

    4月6日公布、10月1日施行。それまでの題名は「就業条件の整備等」でした。

  3. 2015年(平成27年)みなし制度が、3年遅れて施行された

    10月1日施行。国会での修正で、わざと3年遅らせています。

3年遅らせた理由は、修正案を提出した議員が国会で説明しています。専門26業務にあたるかの判断が現場で不安定だったこと、請負と派遣の区分について行政と現場の認識に食い違いがあったこと、そして採用の自由や労働契約の合意原則との関係を議論する時間が必要だったこと。

周知に3年かける必要がある、と国会が判断した制度です。それだけ効果が重い、ということでもあります。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 3年たったら、その人とは終わりになる
  • 派遣先が正社員を増やせば、期間制限の対象外になる
  • 部署名を変えれば、3年は数え直しになる
  • 3か月と1日空ければ、問題なくリセットできる
  • 期限が来てから派遣元に相談すればいい
実際はこうです
  • 選べる道は4つ。終わりではありません
  • 対象外の条件は派遣元との無期雇用。派遣先の雇用形態は関係ありません
  • 業務の実態が変わっていなければ認められません
  • それだけを目的に一度切るのは、制度の趣旨から外れます
  • 1〜2か月前からでは選べる道が減ります。逆算すると半年前です

この決定を、いつ本人に伝えるか

決まったことより先に、決まっていないことを伝えられるか
「まだ決まっていない」と早めに言えるかどうかで、その後がずいぶん変わります。

4つのどれを選んでも、いちばん影響を受けるのはその職場で3年働いてきた本人です。生活が続くかどうかの話です。

次を探すなら時間が要ります。続けられるなら早く知りたい。決まっていない段階でも「いま検討しています」と伝えられるかどうかで、その後がずいぶん変わります。

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

先に答えるのは「その業務は来年も続くか」の1問です。これだけで候補が半分になります。

そして、方向が決まったら決める人に伝わっているかを確かめてください。派遣元での無期雇用を選びたいのに社内だけで検討していると、その道は時間切れで消えます。

派遣で働く人にも、関係があります

派遣で働く方へ

同じ組織単位で3年働く見込みがあり、働き続けたいと希望を伝えている場合、派遣元には雇用安定措置の義務があります(30条)。黙っていると、この義務のスイッチが入りません。

伝える相手は派遣元の担当者です。派遣先ではありません。「このあとも働きたい」と言葉にして残しておいてください。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 選べる道は4つ。直接雇用/派遣元で無期雇用/別の組織単位へ/後任。3年で終わりではない
  • 決めるのは「業務は続くか」「その方に続けてほしいか」の2問だけ。ただし4つは決める人が違う
  • 動き始めるのは半年前。1〜2か月前からでは選べる道が減る
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

いちばん期限が近い方を1人選んで、「その業務は来年も続くか」に Yes か No で答えを書く。

4つを並べて悩む前に、この1問だけで候補が半分になります。Yes なら直接雇用・派遣元での無期雇用・別の組織単位へのどれか、No なら後任か期間満了です。答えが出ないなら、それは業務そのものを見直す時期が来ているということでもあります。

そもそも自社の期限がいつなのか分からないときは、先にこちらを読んでください。日付を決めるのは派遣先で、その控えは手元にあります。

抵触日とは何か、いつ来るのか

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法30条(雇用安定措置)・33条・40条の2第1項1号・40条の3・40条の6、施行規則25条の2、平成24年法律第27号 附則1条2号。歴史の記述は厚生労働省「非正規労働者の雇止め等の状況」(2008年12月19日時点の集計)、衆議院 質問主意書に対する答弁書(内閣衆質171第1号)、参議院厚生労働委員会会議録(2012年3月27日)、厚生労働省「労働者派遣制度の概要及び改正経緯について」によります。図の期間は制度上の定めではなく、準備にかかる時間の目安です。

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