困ったときに、誰に何を言えばいいのか
困ったときに、誰に何を言えばいいのか派遣先にも、苦情を処理する義務があります
派遣先にも、苦情を処理する義務があります(労働者派遣法40条1項)。「派遣会社に言ってください」では終わらせられません。
窓口の担当者名は、労働者派遣契約に書いてあります。異動でいなくなっていることがあるので、いま誰なのかを確かめておいてください。
内容によって、動く会社が変わります。その場のこと(作業・設備・安全)は派遣先、雇用のこと(給料・有給・契約)は派遣元です。
いちばん危ないのは、苦情が来ないことです。声が上がらないまま辞めるのが、いちばん多い形だからです。
どちらが動くかは、内容で決まります
受けたときの手順
- その場で聞き取る
いつ、どこで、何があったか。事実を確かめます。この段階で結論を出す必要はありません。
- 派遣先で対応するか、派遣元に渡すかを分ける
作業・設備・安全なら派遣先。賃金・契約・待遇なら派遣元です。迷ったら両方に共有してかまいません。
- 派遣元に連絡する
派遣先で対応する内容でも、派遣元には伝えてください。雇用主として把握しておく必要があります。
- 対応した内容を、本人に返す
ここが抜けると「言っても変わらない」になります。変えられない場合も、その理由を伝えてください。
- 派遣先管理台帳に記録する
苦情の申出を受けた年月日、内容、処理した状況を記載します(42条1項)。派遣が終わった日から3年保存です。
派遣先管理台帳には、苦情の申出を受けた年月日・苦情の内容・処理した状況を書くことになっています。「口頭で聞いて終わり」にすると、記録が残りません。あとから行政の調査が入ったときに、対応したこと自体を示せなくなります。
いちばん多いのは「言われない」形です
苦情が上がらない職場は、うまくいっているとは限りません。言いにくいだけのことがあります。
- 指示を出す人が1人で、その人に言いにくい
- 苦情の窓口が誰か、本人に伝わっていない
- 前に言ったとき、返事が返ってこなかった
- 「派遣会社に言ってください」と言われた経験がある
- 指示を出す人とは別に、聞く人が決まっている
- 初日に「困ったらこの人」と名前で伝えている
- 言ったことに対して、変えたか変えないかを返している
- 派遣元の担当者が定期的に来て、話す場がある
実務では私たちが職場に伺うのは、この「言いにくさ」を埋めるためです。本人が派遣先に言いにくいことを、代わりに伝えます。言いにくいのは当然です。雇っている会社が別だからです。
言い方を変えると、内容が変わります
「何か困っていることはありますか」では、たいてい「大丈夫です」が返ってきます。聞き方を変えると、出てきます。
- 作業「いま、いちばん時間がかかっている作業はどれですか」
困りごとではなく作業の話として聞くと、答えやすくなります。手順の問題が出てきます。
- 相手「分からないとき、いつも誰に聞いていますか」
名前が出てこなければ、聞ける相手が決まっていません。ここがいちばん多いつまずきです。
- 環境「席や道具で、使いにくいものはありますか」
設備の話は言いやすい入口です。ここから他の話につながることがあります。
なぜ、派遣先にも義務があるのか
派遣では、指示を出す会社と雇っている会社が別です。だから、どちらか一方だけでは解決できない困りごとが必ず出ます。
設備が危ないという話は、派遣元には直せません。現場にしか直せないからです。反対に、時給の話は派遣先には決められません。払っているのは派遣元だからです。
もし派遣先に義務が無ければ、起きている場所には権限がなく、権限がある会社にはその場が見えないという状態になります。それでは止まりません。
だから法律は、両方に苦情を処理する義務を置きました。あわせて、派遣先責任者を選び、管理台帳に記録することまで決めています。
よくある勘違い
- 派遣スタッフのことは、全部派遣会社の責任
- 苦情は派遣会社に回せばいい
- 口頭で聞いて対応すれば、記録は要らない
- 苦情が来ないなら、うまくいっている
- 契約が終われば、記録も残さなくてよい
- 就業に関することは派遣先の義務です
- 派遣先にも処理する義務があります(40条1項)
- 台帳に日付・内容・処理状況を書きます(42条1項)
- 言いにくいだけのことがあります。聞き方を変えてください
- 派遣が終わった日から3年保存です
派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください
確かめてほしいのは1つだけです。労働者派遣契約に書いてある苦情の窓口の担当者が、いま社内で誰なのか。異動でいなくなっていることがあります。
そして、指示を出す人と、聞く人は分けてください。同じ人だと、その人についての話が出てきません。
派遣で働く人にも、関係があります
派遣先にも苦情を処理する義務があります。「派遣会社に言ってください」で終わらせることはできません。
言いにくいときは、派遣元の担当者に伝えてください。派遣元から派遣先に伝わります。苦情を申し出たことを理由にした不利な取扱いは、禁止されています。
まとめ
- 派遣先にも苦情を処理する義務がある(40条1項)。派遣会社へ回して終わりにはできない
- 内容で動く会社が変わる。その場のことは派遣先、雇用のことは派遣元
- 苦情が来ないのは、うまくいっているとは限らない。言いにくいだけのことがある
労働者派遣契約書を開いて、「苦情の申出先」に書いてある担当者名が、いま社内にいるかを確かめる。
異動していたら、その時点で窓口が機能していません。派遣元に伝えて、契約書の記載を直してください。直すのは担当者に一言伝えるだけです。あわせて、いま来ている方にも新しい窓口の名前を伝えてください。
そもそも義務がどう分かれているのかは、別の記事で1枚にまとめています。
派遣先が守ること、派遣元が守ること※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法40条1項(派遣先の苦情の処理)・41条(派遣先責任者)・42条1項(派遣先管理台帳の記載事項と3年保存)・36条(派遣元責任者)・49条の3第2項(申告を理由とする不利益取扱いの禁止)。厚生労働省「派遣先の皆さまへ 派遣社員を受け入れるときの主なポイント」(LL271029 派需08)、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」で確認しています。聞き方の例は法令の定めではなく、私たちが現場で使っているものです。
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