派遣スタッフが辞める理由は「条件」ではない

派遣スタッフが辞める理由は「条件」ではない時給を上げても、同じ理由で辞めます

読了の目安 5分2026年8月時点の制度にもとづきます

企業の派遣活用派遣先契約更新

ひとことで言うと

辞める理由の多くは、時給ではありません。時給を上げても、同じ理由で辞めます。

多いのは3つ。聞ける相手がいない/頼まれる仕事が契約と違う/更新するかどうかを教えてもらえない。

どれも契約書と、初日の準備と、伝え方で防げます。お金をかけずに変えられるところです。

辞める前には、たいていサインが出ています。質問が減る、休憩に出なくなる、更新の話を自分から聞いてくる。

辞める理由は、この3つに集まります

辞める理由と、防げる場所 聞ける相手がいない 分からないことが出ても、誰に聞いていいか分からない。忙しそうな人には声をかけられない → 初日の朝、名前で伝える 頼まれる仕事が、契約と違う 「ついでにこれも」が積み上がる。断りにくく、言えないまま続く → 契約書に作業名で書く 更新するかどうかを教えてもらえない 終わりの2週間前になっても何も言われない。次を探すか決められない → 決まっていなくても伝える
3つとも、お金をかけずに変えられます。時給を上げるより先に効きます。

1つめ:聞ける相手がいない

初日に手が止まるのは当たり前です。問題は、止まったときに聞ける相手がいるかどうかです。

いなければ、自己判断で進むか、黙って待ちます。どちらも、あとで手戻りになります。そして手戻りが続くと、本人が「自分は向いていない」と思い始めます。

「何かあったら聞いてください」では、聞けません

誰に聞けばいいか分からないからです。「迷ったら◯◯さんに聞いてください」と名前で伝えてください。そして、その人が席を外す時間帯があるなら、代わりの人も決めておきます。10秒で伝えられて、いちばん効きます。

2つめ:頼まれる仕事が、契約と違う

派遣先は、契約書に書いていない仕事を頼めません。ところが現場では「ついでにこれも」が起きます。

起きていること
  • 最初は電話だけだったのが、来客も郵便も
  • 「困っているから」と、その場で作業が増える
  • 本人は断りにくく、言えないまま続く
  • 契約書を見たら、どれも書いていなかった
正しい直し方
  • 派遣元の担当者に「この作業も入れたい」と伝える
  • 業務内容の欄を書き直して、両社で合意する
  • 就業条件が変わるので、本人にも書面で伝わる
  • 手間は、担当者に一言伝えるだけ

止める必要はありません。契約を直せば頼めます。問題は、直さないまま増えることです。

実務では本人からは言い出せません。「断ったら次の更新が無いかもしれない」と考えるからです。だから、頼む側が気づくしかありません。

3つめ:更新するかどうかを教えてもらえない

契約の終わりが近づいても何も言われないと、本人は次を探し始めます。「言われない=更新しない」と受け取るからです。

実際には、派遣先の中でまだ決まっていないだけのことがほとんどです。ところが本人からは、決まっていないのか、決まっていて言われていないのかが分かりません。

「まだ決まっていない」と言えるかどうかで、その後が変わります

決まったことより先に、決まっていないことを伝えられるかです。「いま検討しています。◯月中には決まります」の一言で、本人は次を探すかどうかを判断できます。黙っている期間が、いちばん人を失います。

辞める前に出るサイン

気づける3つ
  • 質問質問が減る

    分かったからではなく、聞くのをあきらめたときにも減ります。作業が止まっていないかを見てください。

  • 休憩休憩に出なくなる/早く帰るようになる

    職場に居たくないときに出ます。急に変わったなら、何かが起きています。

  • 更新更新の話を、自分から聞いてくる

    次を探し始めているサインです。この時点ではまだ間に合います。

なぜ、時給を上げても止まらないのか

時給には下限があります。労使協定方式なら、国が毎年示す職種ごとの水準を下回れません。同じ職種・同じ地域なら、他社との差はそれほど大きくなりません。

つまり、時給で他社に負けているから辞めるのではありません。3つの理由は、時給では解決しない種類のものです。

そして、辞められたときに失うのは人だけではありません。仕事を一から説明する時間が、そのたびに発生します。値引きで浮いた分は、たいていここで消えます。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 時給を上げれば辞めない
  • 辞めるのは、その人が合わなかったから
  • 派遣は入れ替わるものだから仕方ない
  • 不満があれば、本人が言ってくるはず
  • 辞めた理由は、派遣会社に聞けば分かる
実際はこうです
  • 3つの理由は、時給では解決しません
  • 聞ける相手がいなかっただけのことがあります
  • 入れ替わるたびに、説明の時間が発生します
  • 次の更新を考えると、本人からは言い出せません
  • 本音は、派遣元の担当者にしか出ていないことがあります

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

時給を上げる前に、「迷ったら◯◯さん」を名前で伝えているかを確かめてください。これだけで、初日の立ち上がりが変わります。

そして、更新が決まっていない段階でも「検討中です」と伝えてください。黙っている期間が、いちばん人を失います。

派遣で働く人にも、関係があります

派遣で働く方へ

契約書に書いていない作業を頼まれたら、断って問題ありません。できる・できないの話ではなく、契約の中か外かの話です。

言いにくいときは、派遣元の担当者に「こういう作業を頼まれています」と伝えてください。契約を直すか、断るかを派遣元が整理します。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 辞める理由の多くは聞ける相手がいない/仕事が契約と違う/更新が分からない
  • 3つとも契約書と初日の準備と伝え方で防げる。お金はかからない
  • サインは質問が減る・休憩に出なくなる・更新を自分から聞いてくる
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

いま来ている派遣スタッフに「分からないとき、いつも誰に聞いていますか」と1問だけ聞く。

名前が出てくれば、その職場は大丈夫です。「その時々で」「聞きにくくて」という答えなら、そこが辞める理由になります。その場で「じゃあ、迷ったら◯◯さんに聞いてください」と決めてください。1分で終わります。

初日までに何を準備するかは、別の記事でチェックリストにしています。

受け入れ初日で差がつく

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。制度の根拠:労働者派遣法26条1項(契約に書く業務の内容と責任の程度)・34条(就業条件の明示)・40条1項(苦情の処理)・40条2項・3項(教育訓練・福利厚生施設)・30条の4(労使協定方式による賃金の下限)、労働契約法19条。辞める理由とサインの整理は法令の定めではなく、私たちが現場で担当者として見てきたものです。統計にもとづく数値ではありません。

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