労働契約申込みみなし制度の4類型
労働契約申込みみなし制度の4類型罰金ではなく「雇ったことにされる」仕組みです
派遣先が法律に違反すると、その派遣スタッフに「うちの社員になりませんか」と申し込んだことにされます。労働契約申込みみなし制度といいます(労働者派遣法40条の6)。
対象は4つ。禁止業務・無許可の会社からの受け入れ・期間制限違反・偽装請負です。
申し込んだ条件は、そのとき派遣元との間にあったものと同じ。本人が承諾すれば、その時点で雇用契約が成立します。
この申込みは、違反が終わった日から1年間は撤回できません。返ってくるのは罰金ではなく、雇用という結果です。
4つのどれかにあたると、動きます
4つに共通しているのは、派遣先がやったことが引き金になる点です。派遣元の手続き漏れではありません。
何が起きるのか
- 違反にあたる状態になった時点で、申込みをしたものとみなされる
手続きは要りません。会社が知らなくても、その瞬間に申し込んだ扱いになります。
- 申込みの中身は、そのとき派遣元との間にあった労働条件
時給も、勤務時間も、契約期間も、派遣元と結んでいたものがそのまま移ります。派遣先の社員の条件ではありません。
- 本人が承諾すれば、その時点で雇用契約が成立する
会社側があらためて同意する必要はありません。承諾だけで成立します。
- 違反が終わった日から1年間、撤回できない
その間はいつ承諾されるか分からない状態が続きます。
時給1,500円・週5日・6か月契約で働いていた方なら、その条件のまま派遣先の従業員になります。派遣先の正社員になるわけではありません。ここは誤解されやすいところです。
「知らなかった」で外れるとき、外れないとき
4つのうち3つには、逃げ道があります。派遣先が違反を知らず、かつ知らなかったことに過失がなかった場合は、みなし制度は働きません(善意無過失)。
- 禁止業務は法律に明記されている。確かめれば分かる
- 許可の有無は、社名を入れれば誰でも調べられる
- 抵触日は自社が決めて通知したもの。控えが手元にある
- 「担当者が知らなかった」は会社としての過失になり得る
- 相手の許可が、契約後に取り消されていたと後から分かった
- 確かめる手順を踏んだうえで、なお分からなかった
- 4つめ(偽装請負)は、そもそも「免れる目的」が無ければ対象外
- 目的が無く、結果として実態が派遣になっていただけの場合
法律上4つめの偽装請負だけは、条件の作りが違います。「労働者派遣法や職業安定法の規定の適用を免れる目的で」その形をとった場合に限られます(40条の6第1項5号の趣旨)。目的が無ければ、みなし制度は働きません。
実務では「目的が無いから大丈夫」とは言えません。目的の有無は、契約の経緯や社内のやりとりから判断されます。指示を出している時点で、行政の指導の対象にはなります。みなし制度に至らないだけです。
なぜ、罰金ではなく「雇う」なのか
この制度は2012年(平成24年)の改正で作られ、2015年(平成27年)に施行されました。公布から施行まで3年、わざと空けています。
- 2008年秋〜非正規労働者の雇止めが相次いだ
対象の多くが派遣でした。行政指導だけでは働く人が救われない、という議論が起きます。
- 2012年(平成24年)法律の題名に「派遣労働者の保護」が入り、みなし制度が作られた
4月6日公布。それまでの題名は「就業条件の整備等」でした。
- 2015年(平成27年)3年遅れて施行された
10月1日施行。国会での修正で、わざと3年遅らせています。周知に時間が要ると判断されたためです。
罰金なら、払って終わります。違反した状態で働かされていた人には、何も残りません。
この制度が返すのは雇用です。違反によって不安定な立場に置かれた人が、その職場で働き続けられる形にする。誰が損をしたかに、直接届く仕組みになっています。
だからこそ効果が重く、周知に3年かけることを国会が選びました。
よくある勘違い
- みなされると、派遣先の正社員になる
- 会社が同意しなければ、契約は成立しない
- 行政から指摘されて初めて、申込みをしたことになる
- 知らなかったのだから、責任は問われない
- 離職後1年以内の受け入れも、この制度の対象だ
- 移るのは派遣元との条件です。正社員になるわけではありません
- 本人が承諾すれば、それだけで成立します
- 違反にあたる状態になった時点で、みなされます
- 知らなかったことに過失がない場合に限られます。禁止業務や許可は調べられます
- 対象は4つです。離職後1年以内の受け入れは、この4つに入っていません
派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください
4つのうち3つは、受け入れる前に紙で防げます。業務名を契約書で確かめる、許可番号を調べる、抵触日通知書の控えを見る。この3つです。
4つめの偽装請負だけは、始まったあとに起きます。業務委託で来ている人に、自社から作業の指示を出していないかを、現場に確かめてください。
派遣で働く人にも、関係があります
この制度は、働く人を守るために作られたものです。ただし自動的に雇用契約が成立するわけではありません。本人が承諾して、はじめて成立します。
「これは違反ではないか」と思うことがあれば、まず派遣元の担当者に伝えてください。判断がつかないときは、都道府県労働局の需給調整事業部(課)に相談できます。
まとめ
- 対象は4つ。禁止業務・無許可の会社からの受け入れ・期間制限違反・偽装請負
- 移るのは派遣元との条件。派遣先の正社員になるわけではない
- 返ってくるのは罰金ではなく雇用。1年間、撤回できない
取引している派遣会社の社名を、厚生労働省「人材サービス総合サイト」で検索して、許可番号が出てくるかを見る。
4つのうち、いちばん短時間で確かめられるのがここです。許可番号(派○○-○○○○○○)が出てくれば、その1つはクリアです。出てこなければ、その取引はいま止めて確かめてください。3分で終わります。
4つめの偽装請負は、業務委託との線引きの話です。分かれ目は「誰が指示を出すか」の一点だけです。
派遣と業務委託の違い※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法40条の6(労働契約の申込みみなし)、4条1項(適用除外業務)、5条(許可)、40条の2・40条の3(期間制限)、平成24年法律第27号 附則1条2号。厚生労働省「派遣先の皆さまへ」(LL271029 派需08)、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、「労働者派遣制度の概要及び改正経緯について」、参議院厚生労働委員会会議録(2012年3月27日)、e-Gov法令検索で確認しています。善意無過失にあたるかどうかは個別の事情で判断されるため、具体的な事案は都道府県労働局需給調整事業部(課)または弁護士にご相談ください。
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