派遣先が守ること、派遣元が守ること

派遣先が守ること、派遣元が守ること分かれ目は「雇用のこと」か「就業のこと」か

読了の目安 5分2026年8月時点の制度にもとづきます

企業の派遣活用派遣先派遣元派遣先責任者派遣法

ひとことで言うと

雇用に関することは派遣元、就業に関することは派遣先です。

派遣元=給料・有給・社会保険・産休育休・教育訓練。派遣先=労働時間の管理・休憩・安全・福利厚生施設・正社員募集の周知。

両方が負うものもあります。安全衛生・ハラスメント防止・苦情処理。どちらか一方では守れないからです。

1枚で見ます

誰の義務か 派遣元(雇っている会社) ・賃金を払う ・年次有給休暇を与える ・社会保険・労働保険の手続き ・産休・育休の手続き ・教育訓練の機会をつくる ・一般健康診断 派遣先(指示を出す会社) ・労働時間の管理、休憩、休日 ・時間外・休日労働をさせる場面 ・危険有害業務の就業制限 ・教育訓練(自社の社員に行うもの) ・福利厚生施設の利用(食堂・休憩室・更衣室) ・正社員募集情報の周知 両方が負う ・安全衛生の確保 ・ハラスメントの防止 ・苦情の処理 ・責任者の選任 ・管理台帳の作成と保存 ・均衡待遇への配慮 迷ったときの分け方 「雇っているからこそできること」= 派遣元 (給料・有給・保険・雇用の継続) 「その場にいるからこそできること」= 派遣先 (時間の管理・現場の安全・設備) どちらか一方では守れないもの = 両方
労働基準法は本来「雇う人=指示する人」を前提にしています。派遣はその前提を外したので、特例で割り振り直されています。

間違えやすいのは、この3つです

有給休暇の申請
よくある形
現場の上長に口頭で言って終わり
正しい形
派遣元に申し出る。現場にも伝えるが、権利としては派遣元へ
理由
有給を与えるのは雇用主である派遣元だから
労働時間の管理
よくある形
「派遣会社が見てくれている」と思っている
正しい形
派遣先が管理する。始業・終業の時刻、休憩、休日
理由
実際に働かせているのは派遣先だから

3つめは健康診断です。年1回の一般健康診断は派遣元。ただし有害な業務に就く人の特殊健康診断は派遣先です。「その場にいるからこそ分かること」だからです。

両方が負うもの

安全衛生とハラスメント防止は、どちらか一方では守れません。

なぜ両方なのか
  • 安全衛生:危険は現場にあります。でも、そこへ人を送り出したのは派遣元です。現場の管理は派遣先、送り出す前の教育は派遣元
  • ハラスメント:起きるのは派遣先の職場。でも、相談を受けて動くのは雇用主である派遣元。両方に相談窓口を置くことになっています
  • 苦情処理:派遣先も「派遣会社に言ってください」で終わらせられません(40条1項)

派遣先が見落としやすい3つ

厚労省の資料で派遣先の義務として挙がっているもののうち、実務で抜けやすいのはこの3つです。

忘れられがちな派遣先の義務
  • 福利厚生施設を使わせる

    給食施設・休憩室・更衣室は、自社の社員が使えるなら派遣スタッフにも利用の機会を与えなければなりません。「うちの社員じゃないから」では線を引けません。

  • 正社員の募集情報を知らせる

    その事業所で1年以上受け入れている派遣スタッフがいる場合、正社員を募集するときはその人にも知らせます。

  • 派遣先責任者を選び、管理台帳を作る

    受け入れ事業所ごとに選任します。台帳は派遣が終わった日から3年保存です。

なぜ、義務が2つに割れているのか

労働基準法などの労働法は、もともと「雇う人=指示を出す人」を前提に作られています。1人の使用者が全部の責任を負う形です。

派遣は、その前提を外しました。雇う会社と指示を出す会社が別になった。そのままでは、どちらが何を守るのか決まりません。

そこで労働者派遣法44条以下で、労働基準法などの適用に特例を置き、義務を割り振り直しました。分け方の基準は「実際にその義務を果たせるのはどちらか」です。だから、時間の管理は現場にいる派遣先、給料は払っている派遣元になります。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 派遣スタッフのことは全部、派遣会社の責任
  • 苦情は「派遣会社に言ってください」でよい
  • 食堂や更衣室は自社の社員のためのもの
  • 残業の管理は派遣会社がしている
  • 健康診断は全部、派遣会社の役目
実際はこうです
  • 就業に関することは派遣先の義務です
  • 派遣先にも苦情を処理する義務があります(40条1項)
  • 自社の社員が使えるなら、利用の機会を与える義務があります
  • 労働時間・休憩・休日の管理は派遣先です
  • 一般健康診断は派遣元。有害業務の特殊健康診断は派遣先です

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

迷ったときの分け方は1つです。「雇っているからこそできること」か、「その場にいるからこそできること」か。

前者は派遣元、後者は派遣先。どちらか一方では守れないもの(安全・ハラスメント・苦情)は両方、と覚えてください。

派遣で働く人にも、関係があります

派遣で働く方へ

言う相手に迷ったら、まず派遣元でかまいません。派遣元には、派遣先に伝えて解決させる役目があります。

ただし、その場の危険(設備・作業のやり方)だけは現場にすぐ伝えてください。時間が経つと危ないものは、派遣先が動くべきことです。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 分かれ目は「雇用に関すること=派遣元」「就業に関すること=派遣先」
  • 安全衛生・ハラスメント防止・苦情処理は両方が負う
  • 派遣先が見落としやすいのは福利厚生施設・正社員募集の周知・責任者と台帳
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

自社の休憩室と更衣室を、いま来ている派遣スタッフが使えているかを確かめる。

使えていなければ、それは法律上の義務が果たせていない状態です。鍵の渡し忘れやロッカーの割り当て漏れといった、手続きの抜けであることがほとんどです。今日中に直せます。

頼む仕事の切り出し方は、別の記事で説明しています。契約書に書けない仕事は、そもそも頼めません。

「任せられる仕事」と「任せられない仕事」

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法40条1項(苦情の処理)・40条2項(教育訓練)・40条3項(福利厚生施設)・40条の2・40条の5第2項(募集情報の周知)・41条(派遣先責任者)・42条(派遣先管理台帳)・44条以下(労働基準法等の適用に関する特例)、労働安全衛生法45条の2、労働施策総合推進法30条の2。厚生労働省「派遣先の皆さまへ」(LL271029 派需08)、「派遣元事業主の皆さまへ」(同 派需07)、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」で確認しています。

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