派遣から正社員になる道は何本あるか

派遣から正社員になる道は何本あるか4本あります。共通しているのは「先に伝えること」です

読了の目安 6分2026年8月時点の制度にもとづきます

仕事・キャリア直接雇用紹介予定派遣無期雇用

ひとことで言うと

道は4本あります。紹介予定派遣で入る/3年が近づいたときに直接雇用へ切り替える/派遣先の募集情報を受け取って応募する/自分でその会社の求人に応募する。

4本に共通しているのは、「このあとも働きたい」と派遣元に伝えていることです。伝えていないと、派遣元の義務が始まりません。

動き始めるのは3年になる半年前。直接雇用は社内の決裁に3〜6か月かかるので、1〜2か月前では選べる道が減ります。

「正社員」と決まっているとは限りません。契約社員やパートのこともあります。雇用形態と条件は、必ず紙で確かめてください。

4本の道

直接雇用に切り替わる4本の道 紹介予定派遣で入る 最初から直接雇用を前提にした形。最長6か月 働いてから、双方が決めます 決めるのは:派遣先と本人 3年が近づいたときの直接雇用 雇用安定措置として、派遣元が派遣先に 直接雇用を申し込むよう求めます 決めるのは:派遣先と本人 派遣先の募集情報を受け取る 1年以上受け入れている派遣スタッフには、 正社員の募集情報を知らせる義務があります 決めるのは:本人が応募するかどうか 自分で応募する その会社の求人に、ふつうに応募する道。 派遣元は引き抜き禁止の契約を結べません 決めるのは:本人
4本とも、派遣先が「雇いたい」と思っていることが前提です。だから日ごろの働きが土台になります。

いちばん多いのは、3年が近づいたときの道

同じ組織単位で3年働く見込みがあり、本人が働き続けたいと希望している場合、派遣元には雇用安定措置の義務があります(労働者派遣法30条)。

その中身の1つが、派遣先に直接雇用を申し込むよう求めることです。派遣元が動きます。ただし——

この義務は、本人が希望を伝えていることが出発点です

「働き続けたい」と伝えていない人には、この義務のスイッチが入りません。聞かれる前に言ってしまってかまいません。「このあとも働きたいです」の一言で足ります。伝える相手は派遣元の担当者。派遣先ではありません。

動き始める時期

いつ伝えると、間に合うか 3年の半年前 ここで伝える 3年 条件のすり合わせと社内の稟議(3〜6か月) 切り替えの手続き 1〜2か月前に言うと、決裁が間に合わず「今回は難しい」になります
直接雇用は、人を1人増やす社内の決定です。予算と枠の話なので、時間がかかります。

この時間は、派遣先が意地悪をしているわけではありません。人を1人増やすには、予算と枠の決裁が要るからです。年度の途中だと、さらに時間がかかります。

「正社員」とは限りません

直接雇用に切り替わっても、雇用形態は正社員・契約社員・パートのいずれかです。会社によって違います。

確かめずに進むと起きること
  • 「社員になれる」と聞いていたが、契約社員だった
  • 時給から月給に変わって、年収が下がった
  • 賞与があると思っていたが、初年度は対象外だった
  • 通勤手当の上限が変わり、手取りが減った
先に確かめること
  • 雇用形態(正社員/契約社員/パート)
  • 年収の見込み(月給・賞与・手当を合わせた額)
  • 試用期間の有無と、その間の条件
  • 勤務時間と残業の見込み

派遣で働いている間の時給と、切り替わったあとの条件は別物です。紙で確かめてから決めてください。

派遣元は「引き抜き禁止」の契約を結べません

派遣元が派遣先に対して、派遣スタッフを直接雇用してはいけないと契約で縛ることは禁止されています(33条)。だから、直接雇用の話が出ること自体は問題ありません。ただし職業紹介として扱われ、紹介手数料が発生する取り決めになっていることはあります。それは会社どうしの話です。

なぜ、この道が用意されているのか

派遣は、もともと原則禁止だった働かせ方の例外として認められました。1999年に国は派遣を「臨時的・一時的な労働力の需給調整に関する対策」と位置づけています。

つまり、ずっと必要な仕事なら、ちゃんと雇うべきだという考え方が前提にあります。3年という期限は、働く人を追い出すための線ではなく、その判断をする時期を決めるための線です。

だから期限の先に、直接雇用や無期雇用への道が制度として置かれています。4本の道は、おまけではなく設計の一部です。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 3年働けば自動的に正社員になれる
  • 直接雇用の話は、派遣先から言ってくるもの
  • 派遣元に言うと、引き止められる
  • 紹介予定派遣なら必ず社員になれる
  • 直接雇用に切り替わると、必ず条件が良くなる
実際はこうです
  • 4本のうちの1本です。自動でなれる制度ではありません
  • 希望を伝えていないと、派遣元の義務が始まりません
  • 引き抜きを禁じる契約は結べません。伝えて問題ありません
  • 両方が合意したときだけです。前提であって約束ではありません
  • 雇用形態も年収も会社によります。紙で確かめてください

派遣で働く人は、ここだけ覚えてください

派遣で働く方へ

覚えるのは日付ではありません。「このあとも働きたい」を、いつ・誰に言うかです。

言う相手は派遣元の担当者。時期は3年になる半年前。この2つだけで、選べる道の数が変わります。

派遣を受け入れる企業にも、関係があります

派遣先の担当者へ

「この人に続けてほしい」と思ったら、半年前に社内で動き始めてください。条件のすり合わせと稟議で3〜6か月かかります。

その方から見ると、返事が無い期間は「断られた」と同じです。決まっていない段階でも「いま検討しています」と伝えられるかどうかで、その後がずいぶん変わります。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 道は4本。紹介予定派遣/3年前後の直接雇用/募集情報/自分で応募
  • 共通しているのは「働き続けたい」と派遣元に伝えていること。黙っていると始まらない
  • 動くのは3年の半年前。決裁に3〜6か月かかる。雇用形態は正社員とは限らない
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

いまの職場で働き始めた月をカレンダーで探して、そこから2年6か月後に印をつける。

その日が、派遣元の担当者に「このあとも働きたい」と伝える日です。すでに過ぎているなら、今日が伝える日です。まだ先でも、印をつけておけば忘れません。伝えるのは一言で足ります。

3年が近づいたときに選べる道は、直接雇用だけではありません。4つの選択肢を企業側の視点で整理しています。

派遣の3年ルールで自分はどうなるのか

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法30条(雇用安定措置)・33条(派遣先による直接雇用を禁じる契約の禁止)・40条の3(個人単位の期間制限)・40条の5第2項(正社員募集情報の周知)・2条4号(紹介予定派遣)、同法施行規則25条の2。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、「派遣先の皆さまへ」(LL271029 派需08)、e-Gov法令検索で確認しています。決裁にかかる期間の目安は制度上の定めではなく、私たちが現場で見てきた実感です。直接雇用後の労働条件は会社によって異なります。

事務職の人材派遣を承っています

私たちは、事務まわりの人手についてのご相談をお受けしています。この記事のような制度の整理も、その中のひとつです。発注が決まっていない段階のご相談でもかまいません。

事務派遣について見る