派遣の時給は何をもとに決まるのか

派遣の時給は何をもとに決まるのか下限の作られ方と、そのうえの評価

読了の目安 5分2026年8月時点の制度にもとづきます

給与・お金労使協定方式同一労働同一賃金派遣元

ひとことで言うと

労使協定方式の場合、時給の下限はこうやって作られます。

国が毎年示す職種ごとの基準額 × 就業地の地域指数 + 退職金に相当する分。この額を下回ることはできません。

そのうえで、能力・経験・成果を公正に評価して実際の時給が決まります。評価のしかたも、労使協定に書くことになっています。

つまり「相場より大きく下げる」ことは、そもそもできません。

下限ができるまでを、順に見ます

時給の下限は、この順で作られます ① 国が毎年、職種ごとの「一般労働者の平均的な賃金」を示す 職種別・能力や経験の段階別に、通知で公表されます ② 働く場所の「地域指数」を掛ける 同じ職種でも、地域によって賃金の水準が違うため ③ 退職金に相当する分を上乗せする 派遣元に退職金の制度がない場合、時給に上乗せして払う形をとります この額が「これを下回ってはいけない」ライン
①の数字は毎年変わります。だから労使協定も毎年見直すことになります。

①の基準額は、職種ごとに、しかも能力や経験の段階ごとに示されます。同じ「一般事務」でも、経験0年と経験3年では別の額です。

②の地域指数は、就業する場所で決まります。派遣元がどこにあるかではなく、実際に働きに行く場所です。

下限の上で、何が評価されるのか

下限は「これ以上」の線です。実際の時給は、そこから上に積まれます。

労使協定に書くことになっている評価の材料
  • 職務の内容(業務の内容+責任の程度)
  • 職務の成果
  • 意欲
  • 能力
  • 経験

法律上これらが向上した場合に賃金が改善されるものであること、そして公正に評価することが、労使協定の必須項目になっています。

だから「何年働いても時給が変わらない」という状態は、協定の中身と噛み合っていない可能性があります。評価のしかたは協定に書いてあるので、読めば確かめられます。

通勤手当や家族手当は、この計算に含めません

賃金が改善されるかどうかを見るときの「賃金」からは、職務の内容に密接に関連しない賃金(通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当)は除かれます。仕事の中身とは別の理由で払われるお金だからです。

もうひとつの方式では、比べる相手が変わります

労使協定方式
比べる相手
同じ地域・同じ職種の一般労働者の平均的な賃金
派遣先が変わると
物差しは変わらない。地域が変われば指数だけ変わる
強み
経験を積んで上げていく道筋を作れる
派遣先均等・均衡方式
比べる相手
派遣先の通常の労働者(無期雇用フルタイム)
派遣先が変わると
比べる相手ごと変わる
強み
いまの職場での納得感が得やすい

なぜ、国が数字を示すのか

労使協定方式は、派遣先ではなく派遣元が自社の基準で待遇を決められる仕組みです。そのままだと、いくらでも下げられてしまいます。

そこで「これを下回ってはいけない」という線を、国が毎年示すことにしました。自由に決めていいかわりに、床を国が決めるという組み立てです。

厚労省は「待遇を引き下げることを目的として、恣意的に締結単位を分けることは、労使協定方式の趣旨に反する」とも明記しています。安くするための道具ではありません。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 時給は派遣会社が自由に決めている
  • 派遣先が払う料金を下げれば、時給も下がる
  • 地域指数は派遣会社の所在地で決まる
  • 同じ職種なら、経験に関係なく同じ下限
  • 時給が上がらないのは仕方がない
実際はこうです
  • 国が示す水準を下回れません。床は法律で決まっています
  • 下限は下がりません。派遣先には料金に配慮する義務があります(26条11項)
  • 実際に働きに行く場所で決まります
  • 能力・経験の段階ごとに額が示されます
  • 能力や経験が上がれば賃金が改善されることが、協定の必須項目です

派遣で働く人は、ここだけ覚えてください

派遣で働く方へ

自分の時給の根拠は、労使協定に書いてあります。協定は、雇っている会社が労働者に周知することになっています。

見当たらなければ、派遣元の担当者に「労使協定を見せてください」と言えます。そこに、対象の範囲・賃金の決め方・評価のしかた・有効期間が書かれています。

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

「もう少し安くならないか」と言われて下げられる部分と、下げられない部分があります。賃金の下限は法律で決まっているので、そこは動きません。

大きく安い見積が出てきたときは、削られているのが賃金以外のどこかだと読めます。何が削られたのかを聞いてください。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 下限は国が示す職種別の基準額 × 地域指数 + 退職金相当で作られる
  • そのうえで能力・経験・成果を公正に評価して決まる。評価のしかたも協定に書く
  • 基準額は毎年変わる。だから協定も毎年見直す
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

派遣元の担当者に「うちはどちらの方式ですか」と1問だけ聞く。

労使協定方式なら、次に「労使協定はどこで見られますか」と聞いてください。周知することになっているので、必ずどこかで見られます。自分の時給が何をもとに決まっているかは、そこに書いてあります。

派遣先が払う料金と、自分の時給の関係が気になったら、こちらです。料金の内訳と、そこから何が引かれているのかを説明しています。

マージン率は低いほど良い会社?

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法30条の4(労使協定方式)・30条の3・26条11項、同法施行規則25条の8〜25条の11。一般労働者の平均的な賃金の額(職種別・能力経験調整指数・地域指数・退職金相当)は厚生労働省が毎年度、職業安定局長通知で示すもので、金額は年度によって変わります。厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金の概要」(PL040929需01)、「労使協定方式に関するQ&A」、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」で確認しています。具体的な金額・指数は最新の通知をご確認ください。

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