派遣会社は、あなたに何を説明する義務があるか

派遣会社は、あなたに何を説明する義務があるか場面は3つ。求めても不利になりません

読了の目安 5分2026年8月時点の制度にもとづきます

働く人のルール説明義務同一労働同一賃金派遣元

ひとことで言うと

派遣会社には、説明する義務があります。場面は3つ。雇入れ時/派遣されるたび/本人が求めたとき。

雇入れ時に説明するのは、昇給・退職手当・賞与の有無、協定の対象かどうか、苦情の処理。派遣のたびに説明するのは、賃金の決め方、休暇、就業条件です。

そして「なぜこの待遇なのか」は、求めれば説明してもらえます。比べる相手との違いの内容と、その理由まで。

説明を求めたことを理由に、不利な扱いをすることは禁止されています(労働者派遣法31条の2第5項)。聞いて損をすることはありません。

3つの場面で、説明されます

派遣会社が説明する3つの場面(31条の2) 雇入れ時 = その派遣会社に雇われるとき 昇給の有無/退職手当の有無/賞与の有無/労使協定の対象かどうか/苦情の処理に関すること あわせて、どちらの方式でどう待遇を決めるかも説明されます 派遣時 = 派遣先が決まって、そこへ行くたび 賃金の決定に関すること/休暇に関すること/労使協定の対象かどうか 同じ場面で、就業条件の明示(就業条件明示書)も行われます 求めがあったとき = 本人が聞いたとき 比べる相手との待遇の違いの内容と、その理由/待遇を決めるときに考慮したこと 求めたことを理由に、不利な扱いをすることは禁止されています
上の2つは自動的に説明されます。3つめだけ、本人が聞かないと始まりません。

雇入れ時:お金の「有無」が分かります

雇われるときに説明されるのは、金額ではなく「あるかないか」です。

雇入れ時に説明されること
  • お金昇給・退職手当・賞与があるかどうか

    金額ではなく、制度としてあるかどうかです。「ある」なら、どういう場合に出るのかも聞けます。

  • 方式労使協定の対象になるかどうか

    労使協定方式か、派遣先均等・均衡方式か。時給の決まり方が変わります。

  • 相談苦情の処理に関すること

    困ったときにどこへ言えばいいのか、誰が受けるのかです。

あわせて、労働条件は書面で明示されます(労働基準法15条)。契約期間、就業場所、業務内容、労働時間、賃金、退職に関すること。ここは口頭では済ませられません。

派遣時:行く先が決まるたびに説明されます

同じ派遣会社に雇われていても、派遣先が変わるたびに説明があります。賃金の決め方も、休暇も、行き先によって変わるからです。

就業条件明示書は、その職場での「頼まれる範囲」です

この紙に書いてある業務が、実際にお願いされる作業の全部です。書いていない作業を頼まれたら、断って問題ありません。あとで「聞いていない」となったとき、いちばん確かな根拠になります。

もうひとつ、派遣料金の額も本人に明示されます(34条の2)。就業を始めるときと、料金が変わったときです。自分の時給が、派遣先の払う額のどのくらいにあたるかが分かります。

求めたとき:いちばん大事な説明です

3つめは、本人が聞かないと始まりません。「なぜ、この待遇なのか」を説明してもらえます。

聞かないと、こうなります
  • 時給が上がらない理由が分からないまま続く
  • 同じ仕事の人との差が、何によるものか分からない
  • 評価がどう反映されているのか見えない
  • 「そういうものだ」と思って納得しないまま働く
聞くと、こうなります
  • 比べる相手との違いの内容と、その理由が説明される
  • 待遇を決めるときに考慮したことが分かる
  • 労使協定方式なら、協定を見せてもらえる
  • 次に何が上がれば待遇が変わるのかが見える

法律上説明を求めたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはいけません(31条の2第5項)。これは条文にはっきり書かれています。

実務では「聞くと印象が悪くなるのでは」と心配される方がいます。説明するのは会社の義務です。聞かれることは想定されています。

聞き方

この順で聞くと、答えが返ってきます
  1. 「うちはどちらの方式ですか」

    労使協定方式か、派遣先均等・均衡方式か。ここで話の前提が決まります。

  2. 「労使協定はどこで見られますか」

    労使協定方式なら、対象の範囲・賃金の決め方・評価のしかた・有効期間が書かれています。周知することになっているので、必ずどこかで見られます。

  3. 「自分の時給は、その中のどこにあたりますか」

    職種と、能力や経験の段階で決まっています。次に何が上がれば変わるのかも、ここで分かります。

なぜ、説明が義務になっているのか

派遣は、自分の待遇がどう決まっているかが見えにくい働き方です。派遣先が払う額も、そこから何が引かれているかも、本人には分かりません。

見えないまま働き続けると、納得できないことが積み上がります。かといって、本人が調べる手段もありません。

そこで2020年4月から、説明の義務が大きく強められました。見えるようにすることが、待遇の改善につながるという考え方です。マージン率などをインターネットで公開する義務も、同じ流れで置かれています。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 待遇の理由は、聞いても教えてもらえない
  • 聞くと、次の仕事を紹介してもらえなくなる
  • 説明は最初の1回だけ
  • 労使協定は会社の内部資料なので、見られない
  • 派遣先が払っている金額は分からない
実際はこうです
  • 求めがあれば説明する義務があります(31条の2第4項)
  • 求めたことを理由にした不利な扱いは禁止されています
  • 雇入れ時と、派遣されるたびに説明があります
  • 雇っている労働者に周知することになっています
  • 派遣料金の額は、本人に明示されます(34条の2)

派遣で働く人は、ここだけ覚えてください

派遣で働く方へ

3つの場面のうち、3つめだけは自分から動かないと始まりません。納得できないことがあれば、聞いてかまいません。

最初の一言は「うちはどちらの方式ですか」で足ります。そこから話がつながります。

派遣を受け入れる企業にも、関係があります

派遣先の担当者へ

派遣元が説明できるのは、派遣先から待遇情報が提供されているからです。契約の前に情報を出さないと、派遣元は契約を結べません。

そして、派遣料金の交渉では、待遇改善が行われるよう配慮する義務があります(26条11項)。契約のときだけでなく、更新のあとも続きます。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 説明の場面は3つ。雇入れ時・派遣のたび・求めたとき
  • 「なぜこの待遇なのか」は求めれば説明される。理由と、考慮した事項まで
  • 求めたことを理由にした不利な扱いは禁止されている。聞いて損はしない
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

派遣元の担当者に「うちはどちらの方式ですか」と1問だけ聞く。

労使協定方式なら、次に「労使協定はどこで見られますか」と聞いてください。周知することになっているので、必ずどこかで見られます。自分の時給が何をもとに決まっているかは、そこに書いてあります。

時給の下限がどう作られているかは、別の記事で説明しています。国が示す数字から順に見ています。

派遣の時給は何をもとに決まるのか

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法31条の2(待遇に関する事項等の説明。2項=雇入れ時、3項=派遣時、4項=求めがあったとき、5項=不利益取扱いの禁止)・34条(就業条件の明示)・34条の2(派遣料金額の明示)・23条5項(情報提供)・26条11項(派遣料金の配慮)、労働基準法15条(労働条件の明示)。厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金の概要」(PL040929需01)、「派遣元事業主の皆さまへ」(LL271029 派需07)、e-Gov法令検索で確認しています。

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