なぜ「事前面接」はできないのか

なぜ「事前面接」はできないのか禁止されているのは面接ではなく、派遣先が人を選ぶことです

読了の目安 4分2026年8月時点の制度にもとづきます

企業の派遣活用職場見学派遣先紹介予定派遣

ひとことで言うと

禁止されているのは「派遣先が人を選ぶこと」です。面接という行為ではありません。

だから、履歴書を送らせることも、「この人がいい」と指名することもできません。名前が付いていなくても、選んでいれば同じです。

誰を雇うかを決めるのは雇用主だからです。派遣では、雇用主は派遣元。ただし紹介予定派遣だけは、面接も履歴書もできます。

できること、できないこと

できません(選ぶことになる)
  • 就業前に派遣先が面接する
  • 履歴書・職務経歴書を送らせる
  • 「この人にしてください」と指名する
  • 年齢・性別で絞る
  • 「まず何人か会わせてほしい」
  • 適性検査を受けさせる
できます
  • 本人が希望した場合の職場見学
  • 業務の内容・使う道具・座る場所の説明
  • 本人からの質問に答える
  • 必要な技能・経験を契約書に書いて伝える
  • 紹介予定派遣なら、面接も履歴書も可

「会う」こと自体が禁止なのではありません。会ったうえで派遣先が選ぶ、という形が禁止です。だから職場見学は成り立ちます。

なぜ、選べないのか

選ぶ人と、責任を負う人が一致しているか ふつうの採用 選ぶのは  A社 雇うのは  A社 給料を払うのは A社 解雇の制限を負うのも A社 選ぶ人と責任を負う人が同じ 派遣先が選べる形にすると 選ぶのは  派遣先 雇うのは  派遣元 給料を払うのは 派遣元 解雇の制限を負うのも 派遣元 選ぶだけで、責任は負わない
実質的に採用しているのに、雇用の責任は負わない。これを防ぐための線です。

右の形を認めると、派遣先は選ぶところだけ取って、あとの責任は全部よその会社という状態になります。合わなければ「別の人に替えてください」で済んでしまう。

だから、選ぶ権利は雇用主である派遣元に置かれています。派遣先が言えるのは「どんな仕事を、どんな条件で」までで、「誰を」は言えません。

それでも合う人に来てほしいときは

選べないからといって、誰が来るか運任せ、ということではありません。伝え方を変えれば、合う人が来る確率は上がります。

「誰を」ではなく「何を」で伝える
  • 作業を具体的に書く

    「事務全般」ではなく「請求書の入力、月200件」。契約書の業務内容がそのまま人選の条件になります。

  • 必要な技能・経験を条件として出す

    「Excelの関数を使った集計ができる」など。人ではなく能力で書けば、条件として伝えられます。

  • 職場の実際を隠さず伝える

    忙しい時期、電話の量、座席の環境。見学で本人が判断できるほど、あとで辞めにくくなります。

実務では「会わないと不安」と言われることがあります。不安の中身をよく聞くと、ほとんどが「うちの仕事ができる人かどうか」です。それは条件として書けます。会わなくても伝わります。

紹介予定派遣だけ、例外です

紹介予定派遣は、最長6か月の派遣を経て、派遣先が直接雇うことを前提にした仕組みです。

ゴールが「派遣先が雇うこと」なので、選ぶ人と雇う人が一致します。さきほどの図でいえば左側の形です。だから面接も履歴書もできます。

「まず紹介予定派遣で」という使い方はできません

面接をしたいから紹介予定派遣にする、けれど直接雇用の枠は本当は無い——という使い方は、前提が崩れています。採用したい枠が実際にあるかを先に固めてから使ってください。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 会うこと自体が禁止されている
  • 顔合わせなら問題ない
  • 「合わなければ替えてもらう」で対応できる
  • どんな人が来るか、まったく指定できない
実際はこうです
  • 本人の希望による職場見学はできます
  • 名前が違っても、派遣先が選んでいれば同じです
  • 雇用主は派遣元です。人を替える前提での受け入れは想定されていません
  • 能力・経験は条件として書けます。「誰を」が言えないだけです

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

言えるのは「何を、どのくらい、どんな環境で」まで。言えないのが「誰を」です。

不安があるなら、面接ではなく契約書の業務内容を細かく書くことで解決します。そのほうが、来てからのすれ違いも減ります。

派遣で働く人にも、関係があります

派遣で働く方へ

職場見学はあなたが見に行く場です。聞きたいことを聞いてかまいませんし、見て「合わない」と思えば断れます。

もし履歴書の提出や適性検査を求められたら、その場で答えず派遣元の担当者に伝えてください。本来は求められないものです。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 禁止されているのは面接ではなく「派遣先が人を選ぶこと」
  • 理由は、誰を雇うかを決めるのは雇用主だから。派遣では派遣元
  • 能力・経験は条件として書ける。「誰を」が言えないだけ
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

「会って確かめたいこと」を3つ書き出して、それが条件として書けるかを見る。

「Excelが使える」「電話に抵抗がない」なら、そのまま契約書の条件に書けます。書けないものが残ったら、それは何を見たいのかをもう一度言葉にしてください。たいていは条件に変換できます。

受け入れが決まったら、次は義務の分担です。派遣先が守ること、派遣元が守ることを1枚で整理しています。

派遣先が守ること、派遣元が守ること

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法26条6項(派遣先が特定することを目的とする行為の禁止)、同2条4号・26条6項ただし書(紹介予定派遣の例外)、40条の5。厚生労働省「派遣先が講ずべき措置に関する指針」、「派遣先の皆さまへ」(LL271029 派需08)、「派遣元事業主の皆さまへ」(同 派需07)、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」で確認しています。

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