派遣会社が守っている決まり
派遣会社が守っている決まり国が課している9つの義務。会社を選ぶときは、ここを見ます
派遣会社は、国から9つの義務を課されています。許可を受けること、頼めない業務に人を出さないこと、マージン率を公開すること、3年働く人に次の仕事を用意すること、などです。
この9つはそのまま「派遣会社を選ぶときの見どころ」になります。守れていない会社は、そもそも取引の相手として危ういからです。
そして守れていない会社と取引すると、受け入れた側にも跳ね返ります。無許可の会社から受け入れると、そのスタッフに直接雇用を申し込んだことにされます。
義務は、入口・途中・出口に分かれます
厚生労働省は、派遣会社が守ることを労働者派遣の流れにそって整理しています。会社として持っていなければならないもの、契約を結ぶときのもの、人が辞めるときのもの。この順で見ると、ばらばらの決まりがつながります。
入口:会社として持っていなければならないもの
- 国の許可派遣を商売にするには厚生労働大臣の許可が要ります。資産の要件や責任者の講習があり、簡単には取れません。2015年の改正で、届出だけでできる「特定労働者派遣事業」は廃止され、すべて許可制になりました。
- 頼めない業務に人を出さない港湾運送・建設・警備・医療関係の4つ。医療関係だけは紹介予定派遣や産休育休の代替などの例外があります。
- 30日以内の雇用契約で出さないいわゆる日雇派遣の原則禁止。見ているのは派遣先で働く日数ではなく、派遣会社とその人の雇用契約の長さです。政令で定められた業務や、60歳以上・学生・副業などは例外です。
- 辞めた人を、1年は元の勤務先に戻さない離職から1年以内は、元の勤務先へ派遣できません。例外は60歳以上の定年退職者だけです。
厚生労働省の「人材サービス総合サイト」に会社名を入れると、許可番号が出てきます。番号は「派○○-○○○○○○」の形です。出てこなければ、その会社は派遣ができません。
途中:運営のなかで守るもの
ここが、会社によって差が出るところです。
グループ企業ばかりに派遣することはできません
派遣会社が自分のグループ企業へ派遣する割合は、全体の8割以下でなければなりません。
親会社が自分の社員を子会社の派遣会社に移し、同じ職場に派遣し直す。それを認めると、雇用の責任だけを外に出せてしまいます。それを防ぐための線です。
マージン率と教育訓練は、公開が義務です
派遣会社は、インターネットで情報を公開しなければなりません。公開が義務づけられているのは次のものです。
- マージン率派遣料金から派遣スタッフの賃金を引いた分の割合。中身は社会保険料・有給の費用・教育訓練・募集の費用と利益で、そのまま儲けではありません。
- 教育訓練に関する事項どんな訓練を、どのくらい実施しているか。比べるなら、マージン率よりこちらです。
- 労使協定を結んでいるかどうか結んでいる場合は、対象の範囲と有効期間の終わり。
- 派遣労働者の数・派遣先の数会社の規模が分かります。
キャリアアップの教育訓練は、努力目標ではありません
派遣会社には、雇っているスタッフに段階的で体系的な教育訓練を行う義務があります。実施状況は毎年、事業報告書で国に提出することになっています。
実務ではここは会社によって大きく差が出ます。名ばかりの動画を見せるだけの会社もあれば、業務に直結する訓練を組んでいる会社もあります。公開情報を見れば、どちらかが分かります。
出口:終わるときに守るもの
同じ課に3年続けて働く見込みのスタッフには、派遣会社が次の仕事を用意する義務があります。雇用安定措置といいます。
- 派遣先へ直接雇用を依頼するいま働いている会社に「社員として雇いませんか」と頼みます。
- 新しい派遣先を提供する本人にとって合理的なものに限られます。遠すぎる・条件が大きく下がる、では足りません。
- 派遣会社が無期雇用にする派遣スタッフ以外として、自社で雇い直します。
- その他の措置雇用を維持したままの教育訓練、紹介予定派遣など。
派遣契約と雇用契約は別のものです。派遣先との契約が終わっても、それだけを理由に解雇することはできません。派遣会社は、まず新しい就業先を探し、それができないときは休業させて雇用を維持することになっています。これができない会社は、許可の取消しの対象になり得ます。
会社を選ぶときに見る3か所
- 許可番号があるか 「人材サービス総合サイト」で社名を検索します。3分で終わります。
- 教育訓練の中身 同じページに公開されています。マージン率が近い2社なら、ここで差が出ます。
- 労使協定の対象職種 頼みたい職種が入っているか。入っていれば、賃金の水準が国の基準で担保されています。
実務ではマージン率の数字だけを並べて低い順に選ぶ、という比べ方をよく見ます。ですが削られたのが利益なのか、教育訓練やフォローなのかで、意味はまったく違います。着任後の手間として自社に返ってきます。
よくある勘違い
- 派遣会社は届け出れば誰でも始められる
- マージン率は各社が自由に非公開にできる
- 教育訓練は派遣会社の努力目標だ
- 3年たったら、派遣会社は何もしなくていい
- 派遣先との契約が切れたら、その日から無給になる
- 国の許可が要ります。2015年に届出制は廃止されました
- インターネットでの情報提供が義務です
- 段階的・体系的な教育訓練は義務で、毎年国に報告します
- 次の仕事を用意する義務(雇用安定措置)があります
- 雇用契約が続いていれば、就業先の確保か休業手当が先です
派遣を受け入れる会社は、ここだけ覚えてください
取引を始める前に、許可番号だけは必ず確かめてください。無許可の会社から受け入れると、そのスタッフに直接雇用を申し込んだことにされます。相手の違反なのに、雇用が自社に返ってきます。
そのうえで、マージン率ではなく教育訓練の実施状況を見てください。任せる仕事が単純なら差は小さいですが、覚えることが多い仕事ほど、ここが着任後の手間に直結します。
派遣で働く人にも、関係があります
登録する会社を選ぶときは、教育訓練の中身を見てください。マージン率は自分の時給が安い理由の説明にはなりません。労使協定方式なら、時給の下限は国が示す水準で決まっているからです。
同じ課で3年働く見込みになったら、派遣会社には次の仕事を用意する義務があります。黙って契約終了にされたら、それは義務を果たしていません。都道府県労働局の需給調整事業部(課)に相談できます。
まとめ
- 派遣会社の義務は入口・途中・出口に分かれる。9項目が国から課されている
- グループ企業への派遣は8割まで。マージン率と教育訓練は公開が義務
- 3年働く見込みの人には次の仕事を用意する義務がある。派遣が終わっただけでは解雇できない
- 受け入れる側は許可番号だけは必ず確かめる。無許可だと雇用が自社に返ってくる
取引している派遣会社の名前を「人材サービス総合サイト」で検索し、マージン率と教育訓練の欄を並べて見る。
2社以上を比べると差が分かります。マージン率が近いのに教育訓練の中身が違うなら、そこが選ぶ理由になります。3分で確かめられます。
受け入れる側にも、守ることがあります。派遣先と派遣元で義務がどう分かれているかを1枚で整理しています。
※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法5条(許可)、4条1項(適用除外業務)、35条の4(日雇派遣)、35条の3(グループ企業派遣の8割規制)、23条5項(情報提供)、23条の2、30条(雇用安定措置)、30条の2(段階的・体系的な教育訓練)、40条の2(期間制限)、40条の6(労働契約申込みみなし)、労働契約法16条・17条。厚生労働省「派遣元事業主の皆さまへ」(労働者派遣を行う際の主なポイント)、「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、e-Gov法令検索で確認しています。許可の有無とマージン率は厚生労働省「人材サービス総合サイト」で調べられます。
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