派遣に頼めない業務がある

派遣に頼めない業務がある港湾・建設・警備・医療。この4つは頼めません

読了の目安 5分2026年8月時点の制度にもとづきます

契約・法律禁止業務派遣法

ひとことで言うと

派遣で頼めない業務は4つです。港湾運送・建設・警備・医療関係。法律で決まっています(労働者派遣法4条1項)。

線引きは「その作業そのものか、周りの仕事か」です。建設現場の事務や施工管理は頼めます。頼めないのは、現場で工作物を作る作業そのものです。

医療関係だけは例外が広く、紹介予定派遣・産休育休の代替・介護施設での就業などは頼めます。

知らずに受け入れると、その人に直接雇用を申し込んだことにされます。「知らなかった」は、この4つでは通りにくい類型です。

頼めないのは、この4つです

派遣で頼めない業務(労働者派遣法4条1項・施行令2条) 港湾運送業務 船への積み降ろし、はしけ運送、荷さばきなど 港湾労働法で別の仕組み(港湾労働者派遣制度)が 用意されているため、通常の派遣は使えません 建設業務 土木・建築などの建設、改造、修理、解体の作業と、 その準備の作業 現場事務・施工管理・CADは「作業」ではないので頼めます 警備業務 施設の警備、交通誘導、身辺警護、輸送警備 警備業法にもとづく警備業者が請け負う仕組みに なっているため、派遣では頼めません 医療関係業務 医師・看護師・薬剤師(調剤)・診療放射線技師などが 病院や診療所で行う業務 この4つの中で、例外がいちばん多いのがここです
受付・会計・医事課の事務・院内の清掃は医療関係業務ではありません。派遣で頼めます。

4つとも、もともと別の法律で別の仕組みが用意されている分野です。派遣という形を持ち込むと、その仕組みが働かなくなります。

線引きは「作業そのものか、周りの仕事か」

いちばん誤解されるのが建設です。「建設会社には派遣を出せない」と思われがちですが、そうではありません。

頼めません(作業そのもの)
  • 足場の組立て、型枠の設置、鉄筋の加工
  • 建物の解体、内装の取り付け
  • 資材の現場内での運搬・整理
  • 掘削、埋め戻し、舗装
頼めます(周りの仕事)
  • 現場事務所の事務、書類作成、経理
  • 施工管理、工程表の作成、写真の整理
  • CADによる図面の作成
  • 本社での積算、見積、受発注

警備も同じです。警備員の業務は頼めませんが、警備会社の総務や配車の事務は頼めます。見るのは会社の業種ではなく、その人にやってもらう作業です。

準備の作業も、建設業務に入ります

「作業そのものではなく、その準備だから」は通りません。資材を現場に運び入れる、作業のために足場材を並べるといった準備の作業も、建設業務に含まれます。現場に入って手を動かすなら、まず頼めないと考えてください。

医療関係だけは、例外があります

医療関係業務は、頼めない業務の中でいちばん例外が広く認められています。人手が足りないまま止まると、困るのが患者だからです。

医療関係でも派遣で頼めるとき
  • 働き方紹介予定派遣として受け入れる

    直接雇用を前提にした形なら認められます。最長6か月です。

  • 代替産前産後休業・育児休業・介護休業をとる人の代わり

    休業する職員の業務を引き継ぐための受け入れです。

  • 場所病院・診療所ではない場所での業務

    介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、社会福祉施設などが該当します。

  • 地域へき地の医療機関などでの就業

    医師の確保が特に困難な地域として定められた場所での業務です。

また、病院で働く人がすべて医療関係業務にあたるわけではありません。受付、会計、医事課の事務、電話対応、院内の清掃や搬送は、医療関係業務ではありません。派遣で頼めます。

知らずに受け入れると、何が起きるか

頼めない業務に派遣スタッフを従事させると、派遣先がその人に直接雇用を申し込んだものとみなされます(40条の6第1項1号)。労働契約申込みみなし制度といいます。

頼めない業務に従事させたとき 派遣スタッフに、頼めない業務をしてもらった(1日でも) その時点で、派遣先がその人に直接雇用を申し込んだものとみなされる 条件は、そのとき派遣元との間にあったものと同じ。本人が承諾すれば、そこで雇用契約が成立します この申込みは、違反が終わった日から1年間は撤回できません
「合わなかったので終わりにします」ができない状態が、1年続きます。

法律上派遣元にも罰則があります。禁止業務への派遣は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(59条1号)。

実務ではいちばん多いのは、契約書の業務内容が広すぎて、いつのまにか禁止業務に入っているケースです。「その他付随する業務」と書いてあると、現場は付随だと思って頼みます。作業名で書いておけば、この事故は起きません。

この類型は「知らなかった」が通りにくいところです

みなし制度は、派遣先が違反を知らず、かつ知らなかったことに過失がない場合には適用されません。ただし禁止業務は法律にはっきり書かれているので、「知らなかった」で過失がないと認められる場面は限られます。受け入れる前に業務名を確かめるのが、いちばん確実です。

なぜ、この4つなのか

共通しているのは、すでに別の法律で人の出し方が決められている分野だということです。

それぞれに、先にある仕組み
  • 港湾運送港湾労働法の港湾労働者派遣制度

    港湾ごとに人の受給を調整する仕組みが別にあります。そこへ通常の派遣が入ると、調整が働かなくなります。

  • 建設建設労働者の雇用の改善等に関する法律

    重層下請の構造の中で、誰が雇用主かを見えにくくしないための仕組みが置かれています。

  • 警備警備業法

    警備業者が自分の従業員に教育をして請け負う形が前提です。指示が他社から出る形は想定されていません。

  • 医療チームで安全を守る前提

    指示系統が分かれると、命に関わる場面で責任の所在が定まりません。だから原則は禁止で、例外を個別に開ける形になっています。

どれも「派遣が悪い」という理由ではありません。その分野に先にある仕組みと、派遣の仕組みが噛み合わないから分けられています。

よくある勘違い

こう思われがちです
  • 建設会社には派遣を出せない
  • 病院には派遣を出せない
  • 短い期間なら、1日くらいなら問題ない
  • 契約書に「その他付随する業務」と書いておけば柔軟に頼める
  • 知らずに頼んだのなら、責任は問われない
実際はこうです
  • 頼めないのは建設の作業です。事務・施工管理・CADは頼めます
  • 頼めないのは医療関係業務です。受付・会計・医事は頼めます
  • 1日でも、みなし制度の対象になります
  • その一文があると、現場が禁止業務に入りやすくなります
  • 禁止業務は法律に明記されています。過失がないと認められる場面は限られます

派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください

派遣先の担当者へ

見るのは会社の業種ではなく、その人にやってもらう作業の名前です。「建設会社だから」ではなく「足場を組むのか、図面を書くのか」で決まります。

契約書の業務内容に「その他付随する業務」と書かないでください。この一文があると、現場が良かれと思って線を越えます。作業名で書けば、越えようがありません。

派遣で働く人にも、関係があります

派遣で働く方へ

契約書に書いていない作業を現場で頼まれたとき、それが建設や警備の作業なら、契約の外というだけでなく、法律で頼めない作業のことがあります。

断って問題ありません。言いにくいときは、派遣元の担当者に「こういう作業を頼まれています」と伝えてください。派遣元から派遣先へ伝わります。

まとめ

この記事で覚えてほしいこと
  • 頼めないのは港湾運送・建設・警備・医療関係の4つ
  • 線引きは「作業そのものか、周りの仕事か」。建設現場の事務や施工管理は頼める
  • 従事させると直接雇用を申し込んだものとみなされる。1年間は撤回できない
TODAY'S ACTION / 今日からできる、たった1つのこと

いまの労働者派遣契約書を開いて、「その他付随する業務」という一文が入っていないかを見る。

入っていたら、そこが穴です。現場はその一文を見て「付随だから頼める」と判断します。実際にお願いしている作業の名前に書き換えてください。書き換えは派遣元の担当者に伝えるだけでできます。

契約書に何を書くのかは、別の記事にまとめました。業務の内容と責任の程度は、別の欄です。

派遣契約に書かなければならないこと

※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法4条1項(適用除外業務)・40条の6第1項1号(労働契約申込みみなし)・59条1号(罰則)、同法施行令2条(医療関係業務の範囲と例外)、港湾労働法2条2号、警備業法2条1項。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、「派遣先の皆さまへ」(LL271029 派需08)、e-Gov法令検索で確認しています。医療関係業務の例外の範囲は改正で変わることがあるため、個別の受け入れ可否は都道府県労働局需給調整事業部(課)にご確認ください。

事務職の人材派遣を承っています

私たちは、事務まわりの人手についてのご相談をお受けしています。この記事のような制度の整理も、その中のひとつです。発注が決まっていない段階のご相談でもかまいません。

事務派遣について見る