日雇い派遣が原則禁止なのはなぜか
日雇い派遣が原則禁止なのはなぜか見ているのは派遣の期間ではなく、雇用契約の長さです
日雇い派遣とは、30日以内の雇用契約で働く派遣のことです。これが原則禁止されています(労働者派遣法35条の4)。
見ているのは派遣元とその人の雇用契約の長さです。派遣先に来てもらう期間ではありません。ここが混ざりやすいところです。
例外は3つの入口があります。政令で定められた業務・60歳以上・学生や副業など。あてはまれば30日以内でも頼めます。
「明日1日だけ来てほしい」は、原則として頼めません。1か月だけなら、31日以上の雇用契約にすれば頼めます。
禁止されているのは「派遣の期間」ではありません
ここを取り違えると、頼めるものまで頼めないと思ってしまいます。
たとえば、派遣元がその人と2か月の雇用契約を結んでいて、そのうち3日だけ派遣先で働いてもらう。これは日雇い派遣ではありません。雇用契約が31日以上あるからです。
逆に、その日限りの雇用契約を結んで送り出すと、就業が1日でも日雇い派遣にあたります。
1日単位の契約はもちろん、2週間の契約も、30日ちょうどの契約も日雇い派遣です。31日以上あれば対象外になります。1か月だけ来てほしいときは、この1日の差で扱いが変わります。
例外は3つの入口があります
原則は禁止ですが、あてはまれば30日以内でも派遣できる場合があります。入口は業務・年齢・生活の3つです。
- 業務政令で定められた業務にあたる
ソフトウェア開発、機械設計、事務用機器操作、通訳・翻訳・速記、秘書、ファイリング、調査、財務処理、取引文書作成、デモンストレーション、添乗、受付・案内、研究開発、書籍等の制作・編集、広告デザイン、OAインストラクション、セールスエンジニアの営業など。専門性があり、日雇いでも雇用管理がしやすいと整理された業務です。
- 年齢60歳以上の人
年齢だけで判断します。就いてもらう業務は問いません。
- 生活学生・副業・世帯収入で対象外になる人
昼間学生/年収500万円以上の本業がある人の副業/世帯収入が年500万円以上あり、その人が主たる生計者ではない場合。その仕事が生活の柱になっていないことを見ています。
実務ではここを確かめるのは派遣元です。学生証、他社の源泉徴収票、世帯の収入を示す書類などで確認します。派遣先が本人に直接聞くことではありません。
短い応援がほしいときに、どう頼むか
- 「明日1日だけ、棚卸しを手伝ってほしい」
- 「今週の金曜だけ、受付に立ってほしい」
- 2週間の雇用契約で人を出してもらう
- 繁忙期の3日間だけ、日ごとに人を替えて出してもらう
- 雇用契約が31日以上ある人に、3日だけ来てもらう
- 政令で定められた業務なら、1日でも頼める
- 60歳以上の方なら、日数にかかわらず頼める
- そもそも派遣ではなく、業務委託や直接のアルバイトで頼む
左の形をどうしても取りたいときは、派遣以外の頼み方を考えるほうが早いです。自社で直接アルバイトを雇う、業務委託で結果を頼む、といった形なら日雇い派遣の禁止はかかりません。
自社から作業の指示を出すなら、それは実態として労働者派遣です。契約書の題名を変えても、指示が自社から出ていれば偽装請負になります。頼み方を変えるときは、指示を誰が出すかもセットで変えてください。
なぜ、禁止されたのか
2012年(平成24年)の法改正で入った決まりです。きっかけは、2008年秋以降に社会問題になった日雇い派遣の働き方でした。
- 1999年(平成11年)派遣で頼める仕事が、原則として自由になった
このとき、日雇いの形での派遣も広がりました。
- 2008年ごろ雇用管理の責任が果たされない実態が問題になった
その日限りの雇用では、安全衛生の教育も、社会保険の手続きも、事実上できません。労働災害が起きたときに、誰が責任を負うのかも定まりませんでした。
- 2012年(平成24年)30日以内の労働者派遣が、原則禁止になった
10月1日施行。あわせて、専門性のある業務や、その仕事が生活の柱になっていない人については例外が置かれました。
禁止の理由は「短い仕事が悪い」ではありません。雇用主としての責任を果たす時間が、そもそも無いからです。
よくある勘違い
- 短い期間の派遣は、すべて禁止されている
- 1日だけの仕事なら、どんな業務でも例外になる
- 禁止されているのは派遣元だけで、頼む側は関係ない
- 業務委託にすれば、1日だけでも頼める
- 例外にあたるかどうかは、派遣先が確かめる
- 禁止は30日以内の雇用契約です。就業日数は関係ありません
- 例外の業務は政令で決まっています。何でもよいわけではありません
- 頼む側も、法律に違反する形での受け入れになります
- 指示を自社から出すなら、実態は派遣です。偽装請負になります
- 確かめるのは派遣元です。書類で確認します
派遣を受け入れる企業は、ここだけ覚えてください
「1日だけ」「今週だけ」が難しいのは、派遣元がそのために30日以内の雇用契約を結ぶことになるからです。日数そのものが理由ではありません。
短い応援がほしいときは、「1日だけお願いできますか」ではなく「この作業を、この時期にお願いしたい」と伝えてください。頼める形があるかどうかは、派遣元が判断できます。
派遣で働く人にも、関係があります
単発の仕事に応募するとき、その会社が例外の確認をしないまま話を進めているなら、その形は法律上できない可能性があります。
学生証や収入の書類を求められるのは、例外にあたるかを確かめるためです。求められないまま1日だけの派遣が決まったら、派遣元に「これは日雇い派遣の例外にあたりますか」と聞いてかまいません。
まとめ
- 禁止されているのは30日以内の雇用契約。派遣先で働く日数ではない
- 例外は政令で定められた業務・60歳以上・学生や副業などの3つの入口
- 理由は雇用主としての責任を果たす時間が無いから。短い仕事が悪いのではない
「1日だけ来てほしい」と考えていた作業を、31日以上の期間で頼めないかを紙に書いてみる。
「棚卸しの1日」ではなく「棚卸しの準備から片付けまでの1か月」で切ると、頼める形になります。作業を点ではなく期間で見ると、派遣で頼めることが増えます。それでも1日で足りるなら、派遣以外の頼み方を検討してください。
そもそも派遣で頼めない業務もあります。港湾・建設・警備・医療の4つです。
派遣に頼めない業務がある※ 2026年8月時点の制度にもとづいています。根拠:労働者派遣法35条の4(日雇い労働者についての労働者派遣の禁止)、同法施行令4条(例外となる業務・場合)、平成24年法律第27号。厚生労働省「労働者派遣事業関係業務取扱要領」、「派遣元事業主の皆さまへ」(LL271029 派需07)、e-Gov法令検索で確認しています。例外となる業務の範囲や収入の要件は改正で変わることがあるため、個別の可否は派遣元または都道府県労働局需給調整事業部(課)にご確認ください。
事務職の人材派遣を承っています
私たちは、事務まわりの人手についてのご相談をお受けしています。この記事のような制度の整理も、その中のひとつです。発注が決まっていない段階のご相談でもかまいません。
事務派遣について見る
